ラブレス | おきらく映画ファンクラブ

おきらく映画ファンクラブ

最新作から懐かしい映画まで
レビューと映画情報をお届けします

ラブレス(2017・露仏独ベルギー・127分)

監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ

主演:マルヤーナ・スピバク、アレクセイ・ロズィン

第70回カンヌ映画祭審査員賞受賞作

 

ロシアらしいというと語弊があるかもしれませんが

トルストイ、ゴーゴリ等人間の本質を深く描く

流れを汲んだ人間ドラマでしょうか。

私にはサスペンスかミステリーに思えましたけどね。

 

ヘビーな映画です。

この映画を観たのが昨夜の21時10分。

4月7日から公開なのでもう今週末で終映かもしれません。

だからといってレイトショーのみ1日1回の上映。

レディースデーで1,100円とはいえ

この映画を鑑賞した女子(おばはん)は私1人。

終映時間が23時25分。

電車の最終まで20分。久々に巨体を揺らして走りましたよ。

心筋梗塞引き起こすかと思いましたよ(笑い事ではない)

ちょっと、上映時間の配慮をお願いしたいわ。

でも、この映画重たいから

お日様サンサンの時間帯に見るのも似合わない。

じゃ、いつ観たらいいのか?

リビング鑑賞なら夕方かな?

後味があまりよくないし共感できる部分も少ないです。

ちょっと頭を冷やし心を落ち着ける時間を求められる映画です。

 

タイトルが「ラブレス」

まさに愛のない世界を描いています。

大企業に勤めるボリスと

美容サロンを経営するジェーニャ。

ロシアでも富裕層の夫婦だと思います。

この2人が離婚することになり

12歳の一人息子アレクセイを

どちらが引き取るかで揉め始めます。

離婚する予定の2人には

既に新しいパートナーがいます。

それぞれのパートナーとの新生活が

最優先でそこに息子の居場所はありません。

両親から必要とされていない愛されていないと

悟った息子アレクセイは家を飛び出してしまう。

 

映画の冒頭、不愉快とも思える警告音

謎の大音量と少年が大木に投げる棒切れ。

この場面必要か?とも思える謎のカット。

これがクライマックス、ラストシーンに生きてきます。

これはもう私も虚をつかれた感じで

心臓にド直球を受けたくらいの衝撃を受けました。

 

自分の幸せしか考えていない

未熟な大人によるネグレストを受けた可哀想な少年。

この映画の家族を一言で表せばそうなるんでしょう。

しかし、問題はより複雑で深刻です。

この映画はロシア版「鬼畜」です。

 

私がこの映画で感じたのはこの家族の問題は

ロシアだけじゃない世界共通の問題ということですね。

この夫婦は片時もスマホIS03を離しません。

子供をほっといて平気で新しいパートナーと夜を過ごす。

食事はどうしたんだ?学校への提出物は?(余計なお世話)

朝帰りしても子供の様子を気にすることもなく

すぐ寝室に入り悪びれずまたスマホIS03をイジリだす母親。

スマホ取り上げて投げつけたろか!と怒りムカムカが沸きました。

両親が揉めるのを廊下で聞いてしまい嗚咽する少年。

もう、悲しくて胸が締め付けられます。

 

少年が家出ではなく事件性(誘拐)を疑われたとき

民間ボランティアの捜索隊が活躍します。

大人数で森や廃墟などを捜索したり

ビラを配って情報提供を求めたりします。

これは実際ロシアでは珍しくない光景だそうです。

警察が犯罪捜査に忙しいので

家出人捜索に力を入れていない事情もあって

民間捜索隊が活躍することが多いそうです。

 

この両親自身も親からネグレストをうけたりして

精神的に成熟していなのは予測できます。

負の連鎖ですよね。

だからしょうがないと片付けてはいけません。

この映画を観て自分には関係ないと思わずに

自分にもどこかエゴはないのかと振り返りたい。

私は正直、生い立ちや人生の目標などで

子供を持たない人生の選択も

あっていいと思っています。

もし出産や子育てに不安があるなら

世間体など気にせず

あえて子供を持たない人生を

選択してもいいと思っています。

でも、子供を授かり生むと決意したら

覚悟しなきゃならないとも思っています。

自分の手に負えないと後で分かったら

親戚や行政などあらゆる手段を使ってでも

まずは子供の生育を

最優先させるべきだとも思っています。

しかし、子供を愛せない親もいるのが実情です。

この映画の母親に母性がないとか

薄情だというのは簡単です。

生んだだけでは真の意味での母親になれません。

子供を抱いて、ともに泣いて笑って過ごした時間が

母親にしてくれますものね。

この母親が単なる自分勝手ではなくて

ただ「愛されたい」

「愛された」記憶がないから

愛し方が分からないのも事実だと思います。

誰かに愛されたい欲求が

誰かを愛したい欲求より

大きくなっている大人が

増えているんだろうなと思います。

 

映画のラストシーンを皆さんはどう捉えるでしょうか。

この夫婦の選択は息子の所在をあいまいにしたまま

結局、自分の人生に責任をとらないんです。

私はこの結末に納得です。

大切なものを失ってもまだ分からない。

酷な言い方になりますけど

生涯、苦しめばいいと思ってます。

 

ちょっと自分の胸に手を当てて

今の自分が愛しているもの

大切にしているものは何かと

問うてみてください。

そういう自分を見つめるための

手段としてこの映画を

観ていただければと思います。