「レッド・ライト」【ネタバレ有り】 | 映画の夢手箱

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 映画の鑑賞記録です。基本的にネタバレ有り。

 今日は14時ころに仕事を終えることのできるシフトだったので、帰宅途中に劇場に寄り、ロドリゴ・コルテス監督の「レッド・ライト」を鑑賞してきました。


 この作品ね、トム・バックリーを演じるキリアン・マーフィーが主演なんですよ。


 パンフレットの俳優紹介の先頭に記事が載っていますからね。


 ロバート・デ・ニーロが主演ではないんです。


 なのに、映画の広告ポスターにおけるキリアンのあの扱いったら!&-| 


 しかし、ロバート・デ・ニーロとシガーニー・ウィーバーという大御所2人に挟まれるなかで、若手ながらキリアンは難易度の高い役を見事に演じきっていました。


 ますます将来が楽しみですね!



 本作は、大学で物理学を教えるマーガレット・マシスン(シガーニー・ウィーバー)と助手のトム・バックリー(キリアン・マーフィー)の師弟コンビが、伝説の超能力者サイモン・シルバー(ロバート・デ・ニーロ)の嘘を暴こうとして対決するが…、事態は予想もしない展開を見せて…、というお話です。


 ラストにはまさかのどんでん返しが用意されていて、もしかして監督と脚本家は「初めにオチありき」で、このオチの部分を思いついたがゆえに、そこから巻き起こしていく形で無理やり肉付けして筋立てしたのではないかと思うくらい。


 ちゃんと伏線は張られているのですが、作品の雰囲気に飲まれてそこを見逃していると、ラストでアッと驚くことになります。


 「雰囲気を盛り上げて大事なことから目を逸らす」ことこそ、インチキ超能力者やインチキ霊媒師が使う手なんですけどね。


 本作は、その組立からして、そのこと(作為的に錯視を引き起こすこと)を示唆しているのだと思います。



 当ブログは基本的にネタバレ有りと明記していますし、本記事のタイトルにもネタバレ有りと書いてありますから、もうネタを割りますね。


 本作を未見でこれから観る予定がある方は、自己責任でお願いしますよ!


 ネタを知ってしまったら、本作を鑑賞したときに受け取る印象は、天と地ほどに変わってしまいますからね!



 …実は、サイモン・シルバーはインチキ超能力者で、キリアンが本物の(無自覚の)超能力者なんだな!8D


 自分でも受け止めたくなかったその事実に、キリアンは、本作ラストで向き合うことになってしまうのですよ。


 本作のタイトルとなっている「レッド・ライト」については、作中、マーガレットが、レオナルド・パラディーノ(レオナルド・スバラグリア)というインチキ霊能力者(シルバーの弟子でもある)の嘘を見破る準備をするため、車中から写真を撮っているときに言及しています。


 その場にそぐわないもの、不自然なものがあったら、それがレッド・ライト(警告)だと。


 そういえば、冒頭でマーガレットたちの前に現れたインチキ霊能者も、赤い光のもとで降霊会を行っていたし、シルバーが隠れ家に使っていた建物のなかで、部屋の前に灯っていたのも赤いランプでした。


 本作では、赤い光は、「ダウト(疑わしい箇所)」を示すためのひとつの信号として使われているようです。


 本作において主要な登場人物は、主役のトムと、その師匠マーガレット、伝説の超能力者シルバー、そして、トムの恋人となるサリー・オーウェン(エリザベス・オルセン)だと思うのですが、このなかでサリーを除いて全員が不幸そうなのが何とも。


 トムも…トムはその最たるものですが…、マーガレットもシルバーも、「本当の自分」に辿り着いていない。偽りに満ちた人生を送っているのです。


 サリーは健全な考え方をする女子大生ですから、トムと夜のカフェーでお茶しているとき、


「超能力者の嘘を暴くことに何の意味があるの?」


 と、率直に尋ねます。


 これは、わたしも疑問に思っていたところです。


 トムも、マーガレットも、その人生を、「インチキ心霊現象の嘘を科学的に暴くこと」に丸ごと捧げているのですからね。


 その知能を使えば、ほかにもっと補助金が獲得できるような研究に着手することができるにも関わらず。


 すると、トムは、


「胃の具合が悪い母親に、ある霊能者が、あなたの胃は大丈夫ですよ、軽い胃炎に過ぎませんよ、と言う。それで、母親は安心して、医者に見せるのが遅れてしまう。本当は胃癌で、医者に見せたときはもう手遅れ。僕たちの研究でそういうケースを防ぐことができるとしたら、それでも意味がないと言える?」


 と、何とも表現しようのない、傷ついた表情を目に浮かべて答えます。


 サリーは、「それはあなた自身の話?」と訊き返しますが、トムはそれには直接の返事をせずに沈黙。


 しかし、その目を見れば、肯定以外に考えられません。


 もしかしたら、この体験が、彼自身が超人的な力の持ち主であるという事実を彼に受け容れさせなかったのかも知れません。



 マーガレットには1人の息子がいるが、その子は4歳のときに倒れて以来、ずっと植物人間の状態。


「死後の世界に何かあると信じることができたら、私はすぐにも延命装置を止めてこの子を行かせてあげることができるのかも知れない。でも、そう思うことができないから、私のエゴでこの子を延命させている。」


 というように、マーガレットは傷ついた胸の内をトムに打ち明けます。


 マーガレットは、全く耳の聞こえない人が傑作を作曲するなど、人間が持っている脳のメカニズムは既に奇蹟に満ちている、これ以外にどうして超能力などを信じないといけないのか、という持論で数々のイカサマを科学的に解明し、嘘を暴き続けてきた。


 そんなマーガレットが、1960年代末から1970年代初めにかけて、シルバーが話題の人であったとき、テレビのトーク番組のようなものに出演して対決したことがあったのだが、惨敗。


 シルバーは、突然、マーガレットの肩口に視線を定め、


「そこに金髪の男の子が見える。心当たりはある? 誰か、そういう人が亡くなった?」


 と訊き、


「その子は行きたがっている。だが、君が行くのを邪魔しているんだ。君が邪魔しなければ、その子は行くことができる。」


 と、告げる。


 マーガレットはトムに、「私は何一言も答えることができなかった。」と、吐露する。


 そして、この日以来、朝も昼も夜も、自分を許したことが片時もないのだと。


 何を許していないかといって、「これを言われた瞬間、その一瞬、シルバーを信じてしまったこと」をだ。



 シルバーはシルバーで、自身が欺瞞の人生を歩んできたことを知っている。


 何しろ、目が見えないという触れ込みさえ嘘なのだ!


 いくらインチキの超能力ショーで巨額の富を築いたといっても、嘘で塗り固めた人生を生きるのはどのようなものだろう。


 実際、隠れ家を探り当てて会いに来たトムの前で、2人きりの部屋のなかで、苦痛に満ちた人生だと述べている。


 でも、このとき、欺瞞に満ちた存在のはずのシルバーが、いいことを言っているんだよね。


「真実を得る方法はただひとつ。”期待しないこと”だ。」


 どんなに彼が嘘つきでも、これは真実と思いましたよ。


 観察者は、ゼロの境地で観察しないとね。


 観察を始める前から強度の主観を持っていると、人は、自分の欲しくない情報を無視する傾向にありますからね。


 予想外の情報を手にしても、あれこれ理屈をつけて却下することさえありますし。


 本作においては、手を触れずに物体を動かす念動力(テレキネシス)、障害物越しに内容を読み取る透視能力、相手の心を読むテレパシー能力、思い描いた画像をフィルムに焼きつける念写といった一連の超能力と、死んだ人の霊魂と話をする霊媒師の能力、騒霊などのポルターガイスト現象がどうも一括りで見られているようで、マーガレットが暴き立てているのは超能力者なのに、


「それらの現象を信じることができれば、死後にも何かあると信じられるのに…。」


 と言っていることに大変違和感があり、終始、「???」状態でした。


 わたしからすると、サイキック能力と霊現象は全く別のものなんですね。


 人間が進化して脳を含めた身体能力が発達すれば、サイキック能力が発現することもないことではないと思いますし、霊現象と比すれば、こちらの方がより物質的、より現実的な現象かなと感じるのです。


 しかし、帰宅して家人にこのことを語ったところ、「要するに、”目で見えないもの”を信じられれば、死後も信じられると言っているのでは?」と解説され、やっと合点がいきました。8D


 そういえば、シルバーもステージで言っていました。


「あなた方は、目で見るものだけを信じるのか? それとも、私を信じるのか?」


 と。


 どちらを信じようと、幸せならばいいと思いますが、どうもね。


 本当は知っている真実から目を背け続けるトム。


 自分を決して許さず、批判し続けるマーガレット。


 嘘で塗り固め、支配できない者は葬ろうとさえするシルバー。


 人生を誤っているとしか言いようがない。


 本作は、オチを知った後も、いくつかよくわからない点が残ります。


 一生懸命、考えたのですが…、何か見落としているのでしょうか。


 オチ自体には、こういう伏線が張られています。


 マーガレットがテレビのトーク番組に出たとき、トムがサリーといっしょにそれを見ている。


「次に、”骨”って言いだす。そうしたらお終いだ!」


 というように、未だ語られていないトークの内容を次から次に先取りして口走り、いらいらしているトムに、サリーが驚いて、


「なんでわかるの?」


 と訊くと、「僕も超能力者なのさ。」と、軽く受け流します。


 でも、これ、そのまんまなんですね!8D


 わたしはぼんやり野郎なので、単に、トムはマーガレットの理解者で付き合いも長いから、口癖なんかもよく知っているんだろうくらいに思っていました。


 また、マーガレットが無言電話を受けたとき、電話を切ってから改めて珈琲を飲もうと匙で中身を掻き回すと、電話に出る前は何ともなかった匙がくの字に曲がっているのを知って愕然とするシーン。


 シルバーがやったのかと思わせておいて、これが実はトムの仕業なんですね。


 最後に、自分が超能力者だと自覚してから過去の映像が流れるのですが、このシーンもそれらに含まれていました。



 何かしら異常現象が起きるとき、そこに居合わせるのは、必ず、トム。


 それに気づけば、種明かしを聞くまでもなく、オチに気付くことができるのですから、鑑賞の途中で看破するのは、存外、難しいことではなかったかも知れませんね。


 わたしは、かなり後になるまでサリーがシルバーとグルなんじゃないかと疑っていました。てへ!



 しかし…、なお残る数々のクエスチョン。 


・40年前にシルバーを糾弾していた記者が心臓発作で死んだ件は、偶然なのかシルバーによる他殺なのか?


・マーガレットが持病で死んだ件は、本当に病死なのかシルバーによる他殺なのか?


・前2件がシルバーによる他殺だとしたら、なぜトムを殺そうとしたときだけ、あんなに杜撰な手口なのか?(自分が公演している劇場のトイレで絞殺・撲殺するなど! し遂げていたとしても、事件になることだけは間違いない!)


・前2件が偶然だとしたら、なぜ2人ともシルバーを糾弾した直後にタイミングよく死んでいるのか?


・トムがシルバーのインチキを暴こうと、マジック・ミラーの後ろで装置の電源を入れた瞬間、シルバーが気づいてそちらを見たのはなぜか? インチキ超能力者なのに、なぜ気付いたのか?(パラディーノがマーガレットらの手法をシルバーに明かしていないと訴えたときの様子は真に迫っていたにも関わらず。)


・大学の科学的実験を受けたとき、どのような手法でシルバーは念写を行った? また、どのようにして水道から流れる水を動かした?


・テロップの後の、窓が開いているカットの意味は?(トムが投身自殺したのかとも思いましたが、それでは深読みのしすぎでしょうし。)小鳥の死骸が出て来るシーンでも窓が映りましたから、これは、改めてトムのサイキック能力を物語るためのカットなのでしょうかね。



 ヤバい。ネタを知った後でなお、わたしはトムやシルバーに惑わされているのかも知れませんね!8D


【追記】

 本記事をUPしてから、ほかの方の感想を色々と読みに行ったところ、トムは自分の超能力に対して自覚がなく、自分と同じ能力の人を無意識に探そうとしてマーガレットに師事していたと思っていましたが、そうではなくてトムには超能力者としての自覚があったような気もしてきました。


 いずれにしても、制御はできていなさそうに見えます。もし自覚ありの超能力者だとしたら、部屋で大暴れして扉の外に鳥の死骸ってシーン、フェイク入れまくりだろう! って愕然としますけれども。=)



公式ホームページ
http://gacchi.jp/movies/red-light/


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