オブリビオン | 愛すべき映画たちのメソッド☆

愛すべき映画たちのメソッド☆

映画感想家・心理カウンセラー・芸術家のNatsukiです☆

『映画にどんなに素晴らしいメッセージが含まれていようと
「娯楽性」がなければ作品としては失敗だ』/レオナルド・ディカプリオ



「何故、彼は人類のいない地球に残されたのか?」

自分自身が「本物か偽物か」「強いか弱いか」「善か悪か」なんて考える前に、いかにして「自分らしさ」や「自尊心」を持てるか・・・というメッセージで計り知れない勇気をもらえる作品。

西暦2077年。

60年前に起きたエイリアンとの戦争に勝利したにもかかわらず地球は荒廃し、人類の大半は、土星の衛星であるタイタンへの移住を余儀なくされていた。

そんな中、地球にたった二人残った男女は、上空何千メートルの住居から地上を監視する平凡な日々を送っていた。

ある日パトロールの途中で男は、墜落してゆく宇宙船を発見する・・・。

同じくトム・クルーズ主演の『バニラ・スカイ』を連想させるニューヨークの「夢」から始まり、『トータル・リコール』を彷彿とさせる「アイデンティティ探し」の物語、『A.I.』や『ウォーリー/WALL-E』の様な「壊滅した地球」での孤独と景観と静寂。

エンパイアステートビルへ恋人をいざなう『キング・コング』と、自由の女神による『猿の惑星』、『宇宙戦争』のヤンキースのキャップ、そして物語の骨格には『二都物語』へのオマージュも入っている。

宇宙船の名前が「オデッセイ」だったり、「HAL9000」似の目を持ったドローンなどを筆頭に、『2001年宇宙の旅』の様な「完璧に管理された生活」と、「塵ひとつ無い清潔な居住空間」の冷たさも怖い。

その「無機質さ」と、「崩壊したアメリカ」の風景との「対比」が恐ろしくもあり美しく、完全に映画の世界に引き込ませるリアリティとパワーが満ち溢れている。

数々のSF映画の集大成的なプロダクションデザインとストーリーが良い意味で刺激的に機能していて、朽ち果てたUNIVERSALのロゴに続くオープニングからドキドキが止まらず、ラストまで全く目が離せない。

そして、実際にニューヨークの近代美術館(MoMA)に所蔵されている《クリスティーナの世界》という、アメリカの画家アンドリュー・ワイエスが描いた絵画が象徴的に登場する。

病弱で「限られたエリア」でしか暮らすことができなかったワイエスが、病で足が不自由ながら強い生命力で生き抜くクリスティーナという女性に出逢い、心を打たれて描いた作品だ。

《限られた空間の限られた可能性の中でしか生きることができない男女》が出逢い惹かれ合う、時を越えたラブストーリーの切なさが本作と絶妙にリンクしている。

それは、まるで手塚治虫の『火の鳥』の様に壮大で儚く、深い。

フランスのエレクトロ・ユニット「M83」のアンソニー・ゴンザレスが手掛けた音楽も『ブレードランナー』の音楽の様に印象的で胸騒ぎがする。

物語の「その後」を想像する楽しみを残してくれるラストシーンは、マイケル・ベイ監督の『アイランド』の様に輝かしくもあり、物悲しくもあり、深い余韻が永遠に残る。

「oblivion=忘却/大赦」の果てには何が待っているのか。

「この未来を、誰が予想したか。」



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