「自分が無職の世界が待ち遠しい。そう言った戦争写真家の事を時々、思い出すよ。」
連続放火と、それを予言したようなグラフィティアート。それらがある街に続々と現れる。ある兄弟が放火とグラフィティアートの関連性を調べだした時・・・。
伊坂幸太郎の原作同様、オープニング一発目のセリフにドキッとさせられる。
今作も意味が無さそうなタイトルと思わせといてラストで判明し、心に染みる。
今ではタイトルを聞いただけで涙が溢れそうになる。
考えさせられる《家族》や《兄弟》の意味、心強さ、親友以上の深い絆で繋がっている不変の存在、儚さ、唯一無二の安らぎ・・・。
伊坂作品では珍しい家族のドラマを中心としたサスペンスで、意味深なセリフと言い回しの数々は安心の伊坂印。
「人間の賢さは、人間のためにしか役に立っていない。」
仙台を舞台にした家族愛、兄弟愛に満ちた重厚なドラマであり犯罪サスペンス。
予想もつかないヒネリ連発な展開だが、それ以上に一つの家族の《愛》を感じさせられる、長くて深い《絆》の年月。
伊坂幸太郎自身の最も思い入れの強い作品であるという事が本当によく分かった。
この作品で得られたもの・・・それは、究極の《父親としての在り方》。
「人間はさ、いつも自分が一番大変だ、と思うんだ。不幸だとか、病気だとか、仕事が忙しいだとか、とにかく自分が他の誰よりも大変な人生を送っている。そういう顔をしている。それに比べれば、あの鳩のほうが偉い。自分が一番つらいとは思ってもいない。」
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