聴く力

 

 

先日、JR環状線の車内での光景です。5,6歳ぐらいの女の子が盛んに隣に座っている女性に「ママ、ママ」と話しかけていました。その母親は、返事もせず、顔も上げずに黙々とスマホでメールを打っています。返事をしてくれない母親に話しかけるのを諦めた女の子は、小さな声で何か歌を歌い始めました。そのうち、目的の駅に到着したのか、慌てて母親がその女の子に「降りるよ」とひと声かけ、引っ張るように降りて行きました。

 このわずかな時間に親子が失ったものを考えたとき、その大きさに愕然とする思いがしました。それは、この親子の会話が全く成立しなかったということだけではなく、会話に欠かせない互いの信頼関係をこの母親は自ら壊してしまったことにあります。さらに、この母親は、我が子との会話をしなかったことに対する罪悪感といったものを全く感じていないことも問題です。子どもが話しかければ、それを笑顔で受け止め、優しく応えてくれるというコミュニケーションの繰り返しが、人に対する信頼関係の基盤だと思います。

 

 「きく」には「聞く」と「聴く」がありますが、受け身な「聞く」ではなく、積極的に「聴く」ことを大切にしたいと思います。「聴」は、「耳」に「+(プラス)」して「目」と「心」を相手に向けることだと私は思っています。

 子どもにとって、話を聴いてもらった喜びや、話を聴いて得た喜びを実感することが大切だと思います。

 我々教職員や保護者も、忙しさに負けて、子どもたちの話を十分に聴けていない場面があるかもしれません。それが、話を「聴けない」、「聴かない」子どもたちをつくっているとすると、大人の責任も大きいと思います。

 

 

<ハナさんのプロフィール>

電気会社や出版社、中学校長を経て、現在英風で渉外企画の仕事を担当しています。

英風女子のホームページは コチラ

 

 

※ハナさんのおすすめ本

 「あたりまえだけど、とても大切なこと」(ロン・クラーク著、亀井よし子訳)

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