バレッタ-黒い雨-seventh.赤色の悪魔篇20171107 | 乃木坂46×二次小説/宮本えいだい

乃木坂46×二次小説/宮本えいだい

#生駒里奈/橋本奈々未/堀未央奈/大園桃子/山下美月/白石麻衣/齋藤飛鳥
など乃木坂46の二次小説を書いてます。
そして、生駒ちゃんが出てくる小説を探しています。

🔖バレッタ―黒い雨― 
  
🔖episodeふりかえる先に-拾弐-
生駒の能力解禁でございます!イメージはずっと変わらずあったのですが、いざ書くとなると知識を入れ、確認も必要なので時間がかかってしまいました。
頭がクラクラします。これも特殊能力の影響なのでは…。

ともあれ、今後も変わらぬご愛読をよろしくお願いします。


扉画・挿絵⊿募集中!

eidaman

🔖ふりかえる先に―拾―


『乃木坂の生駒里奈だな…?』

黒づくめの男らが、生駒を囲み拳銃を構えた。
乃木坂組の隊員たちは、地面に臥して、立っている者はいなかった。

生駒は星野を抱えたまま、微動だにしない。涙が頬をつたい、星野の制服に落ちては滲んでいく。

悲しみに鬱ぐ背中に向けて、無情にも引き金に指がかかる。




彼らは気づく。

引き金をひくことに高鳴る、自らの脈動に。


彼らは気づく。

自らの心臓と異なる鼓動が、近くにあることに。


それは、足音のように近づく。


それは、次第に大きくなる。


混乱の中に思うのだ。


この鼓動は何なのか?

何をしようとしているのか?


やがて、『何物かの音』が身体を呑み込んでいく。


彼らはようやく理解する。


自らが『獲物』であったと言うことを。




生駒を囲んでいた8人の男たちが、よろめき、苦しみに悶えて後退する。


あるものは吐物をこぼし、
あるものは意識を失い卒倒した。


乾留液(かんりゅうえき)のような恐怖を塗り残して、ようやく止んだ捕食者の鼓動。

苦しみから逃れた彼らは、朦朧とした意識の中で直感する。

今、目の前で立ち上がる少女こそが、『それ』であったと言うことに。


鮮血の雫が落ちたような眼が、こちらを捉えている。


『…くそっ…!』

定まらない視界の中、男は銃を向けた。
鉛玉が少女の足元に刺さる。

男が次に見たのは、目前に迫る緋色の瞳。そして、黒に赤色が混じる気味の悪い空だった。


緋色の眼が、右手の感覚に震えていた。

アスファルトを削った銃弾に目をやった後、獲物に向かって飛び出す。
体がぶつかる直前で、頸を鷲掴みにした。
獲物の身体を引き摺って止まると、掴んだ右の掌に力を込める。

固めた雪塊が潰れていくような感覚に、身体は高揚した。


頭を後ろに垂れ、だらりと生気を失ったものに、ひどく興味が失せた。

生命の動く気配がして、振り向く。
命が2つ並び、こちらに銃を構えている。

構わずに突進すると、左肩に鉛玉が捻込まれた。だが、痛みのことはよく分からなかった。

懐に入り、銃を構えていた両腕を持ち上げる。
腕の間から見えた顎に向けて、渾身の掌底を打ちつける。

パァン!と軽い音がして、獲物が仰向けに傾いていく。


隣からまた、銃口が向けられる。

既に空中に舞い上がる身体は、拳銃に向けて踵落としを放つ。
前屈みになる獲物の後頭部に向かって、両手を合わせハンマーのように打ち下ろした。
地面にうつ伏せに張りついた体の、頸元を何度も踏み潰す。

霜柱を踏むような感覚に、緋色の眼は、恍惚の表情を浮かべた______

🔖








🔖ふりかえる先に―拾壱―


灰色に渦を巻く正面玄関の向こうから、乾いた破裂音が幾つも響いた______

生駒の後を追おうとした生田は、身動きが取れないでいた。

明らかに異変が起きているビルの外、重症の飛鳥を連れて行く訳に行かない。かと言って、混乱の最中に1人置いて行くこともできない。
立ち尽くした生田の背中に、か細い声がかかる。


エリカ…』

壁に身体を預け座る飛鳥に、生田が駆け寄る。


『…行ってあげて。わたしは大丈夫だから…』

音を上げ浅い呼吸の飛鳥は、強い眼差しを生田に向ける。

だが、エレベーターを出た時とは状況が違っていた。
予想だにしない敵の出現。この場所さえ何が起こるか分からない。
恐らく今の破裂音も…。

片側となった生田の異状聴覚は、精彩を欠いている。生田がビルの外の音に、意識を向けた時だった。


目の前の飛鳥の右眼が突然、碧く強い光を放ち出す。

『…ぇ!?…』

狼狽する飛鳥は、右目を手で塞いだ。

飛鳥の様子に視線を奪われる生田だったが、直後、自分の異変に気づかされる。

今まで聴くことが難しかった、ビル周辺の音という音が、残る左耳に雪崩れ込んできていた。

一瞬でビル周辺の状況を、生田は理解する。


『…みな…』
『…みなみ…』

無意識に流れ出た言葉は、飛鳥のものと重なる。

2人の視線が交わった直後だった。
生田は込み上げる虫酸に、両手を地面に突かされる。

さっきまで、みなみと生駒の音を捉えていた感覚の中に、『何か』がモゾモゾと這い出てきて、埋め尽くされていく。
そのものの鼓動が、身体中を這いずり、内側から命を食い破られる感覚に、胃液がこぼれた。


(何だ…!??鼓動に意識が奪われる…)

歪んでいく視界に、必死に意識を保とうと堪える。意識を奪われる直前、不気味な鼓動は死の感覚を残して、霧散した。


ドン!

響いた鈍い音に、生田がよろめき立ち上がる。
振り向き映った光景に、瞬間、言葉を失った。

エレベーター横の非常階段のドアが大きく開き、息を切らした隊員が、こちらを見つめる。


『玲香!』

生田の上ずった声が響く。
駆け出した生田を、先のダメージが襲い、大きくよろめいた。

バランスの崩れる生田の体を、華奢だが頼もしい腕が受け止める。

『ぉっと…。大丈夫か?』


胸元の玲香のにおい。
生田はそのまま顔をうずめて、背中に両手を回した。

(あぁ…。玲香だ。玲香のにおいだ…)


狼狽える玲香の声が、少し遠くに聞こえた。
その後、玲香の胸からすっと空気が抜けて、優しく両腕が背中を覆ってくれる。


僅かな安息の後、
生田は回していた両腕に力を込めた。


『ぅっ…。苦しい!苦しいよ!?生ちゃん!

玲香が生田の背中をタップする。


『…何で私らだけ助けるようなことしたぁ~っ!勝手なことばっかりー!!

生田は更に力を込める。


『ぃゃ…だから…。
必ず戻るって言ったじゃん!…ううぅ…っホントに死んじゃうぅ…』

生田に覆い被さるように、うなだれる玲香。
小さな生田の背中が、震えていることにに気がつく。


『玲香…。さっきから、みなみの音が聞こえないの…。
生駒ちゃんの音も分からなくなっちゃうし…。
どうしよう…どうしよう…』

煙に巻かれている正面玄関に目を移す玲香。
ビルの裏側からは、銃声が聞こえる。

玲香は、自らが推測した『最悪のシナリオ』が、続いているのだと直感した。


震える背中を撫でながら、インカムに手をやる。

『司令室、レイカです。地下の状況を報  告します。回線を切り替えます…』

玲香は奈々未たちに、地下での戦闘と被害状況、地下の隊員たちが西階段から脱出することを、手短に伝えた。

『…エリカと正面玄関の、生駒隊に合流します。
同行している飛鳥が、戦線に加われません。移動車輌を正面に回せませんか?…』


少し落ち着きを取り戻した生田が、胸元から顔を上げた。
司令室とのやり取りの途中、交わった玲香の瞳は勇ましく、凛とした表情で頷いてくれる。


2人で飛鳥の肩を抱え、正面玄関の手前で立ち止まった。


『…エリカ、外のことを教えて?』

確認するように玲香が聞く。


『…1人だけを除いて、他の音はすごく小さくなってる…。
でも、この音……気をつけて。玲香』

言い様のない言葉を飲み込む生田は、恐怖に顔を凍らせる。


『うん…』

覚悟を決めるかのように、深く頷く玲香。腰のポーチから、桜色に輝く小瓶を取り出す。


瓶から舞い出す花弁たちは、煙の中で放射状に円舞する。
灰色に渦巻いていた空間に、淡紅の道がつくられた。


『…先に私が行く』

飛鳥の腕を肩から下ろし、玲香が歩みだす。

ビルを出た玲香たち。

数十メートル先の路上に、幾つもの影が落とされているのが、目に入った。
警戒しながら、ゆっくりと近づいていく。




夕闇に残る僅かな明かりが、アスファルトの上にできた、小さな澱みに反射している。

散り散りに臥せるセーラー服と、敵だったであろう黒いものの中で、もぞもぞと動く影が1つ。


『生駒…ちゃ?!』

咄嗟に声を上げた生田が、異変に気づく。


生駒は、仰向けになった黒いものの傍らに、座り込んでいた。

セーラー服の袖を真っ赤に染め、黒いものに向かって、両手を繰り返し打ち付けている。

緋く染まった眼は、夢中で黒いものの中身を見つめる。

その姿はまるで、
砂場に隠した宝物を、子どもが探しているかのように錯覚させるのだった。
🔖








🔖ふりかえる先に―拾弐―


理性を埋め込まれない獣が、獲物を貪っている______


気が触れてしまう光景。
飛鳥は散り散りに臥せる隊員に向けて、必死に目を凝らした。
ビルの中で、突然飛び込んできたビジョンがフラッシュバックし、瞳の中の世界と重なっていく。

常人を遥かに凌ぐ飛鳥の眼は、冷たいアスファルトの上に、仰向けになるみなみを映し出す。


なみっ

踏み出した飛鳥の身体を、生田の腕が抑えた。
飛鳥は、ここまで支えてきた体の力が流れ出すように、膝から地面に座り込む。

崩れる飛鳥を支えながら、生田の神経は目の前の獣に向けられていた。


『あれ』は危険だ。


生田と玲香は、自らの直感…否、生き物としての本能に訴えかけられていた。


飛鳥の言葉に、獣の背中がぴくりと波打ち、手が止まる。

ブリキ人形のように首がまわり、緋色の瞳がこちらを向いた。


獣はゆるゆると立ち上がる。

流れ出したばかりの血液のような緋。

鈍く輝いた眼光に、
自分にも命の終わりがあることを、突きつけられる。

緋い眼の掌から、掴まれていたものが足下に落ちた。
手に着いた赤色を地面に払い、既に同じ色に染まる上着に、両手を拭う。


視線が交わり流れる、わずかな時間。


『あれが…狂装曲(きょうそうきょく)??』

困惑した生田が呟く。


『…そう考えるしか無いだろ…』

玲香の指が小瓶の蓋にかかる。


緋い眼から向けられている重圧。
四肢を縛りつけるそれが、目の前のものから、2人への殺意であると直感した。

ここまで無意識にしがみついていた希望を、玲香と生田は削り捨てるのだった。



生駒里奈の持つ特殊能力______
狂装曲(きょうそうきょく)
最強の特殊能力と言われる力。
視覚、聴覚、嗅覚、触覚の感覚、および筋力等の運動能力を爆発的に向上させる。
奈々未と飛鳥の重眼視界や、生田の異状聴覚、沙友理の特殊能力は、狂装曲から派生したものと考えられることから、『原始の能力』と称されることもある。

神経繊維をコントロールし、神経伝導速度を上げることで、力を発揮する。
通常、視覚や聴覚等から得た情報が、脳へ運ばれる速度が100m/秒。運動のため、脳から筋肉等に伝わる指令の速度は50m/秒程だと言われている。
生駒はこれを段階的に高速化させ、常人よりも素早く事象を感知し、圧倒的なスピードとパワーで対応することができる。但し、極度の超人化は体への負担も大きく、他の神経に影響をきたす為、無闇に行うことはできない。
今回暴走した能力は、戦いを共にしていた生田と玲香も知らない力である。最強の能力を扱う代償は、未だ暗闇に潜んだままである。
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