バレッタ―黒い雨―sixth.赤色の悪魔篇20171026 | 乃木坂46×二次小説/宮本えいだい

乃木坂46×二次小説/宮本えいだい

#生駒里奈/橋本奈々未/堀未央奈/大園桃子/山下美月/白石麻衣/齋藤飛鳥
など乃木坂46の二次小説を書いてます。
そして、生駒ちゃんが出てくる小説を探しています。

🔖バレッタ―黒い雨― 

🔖episodeふりかえる先に-玖-
なぜか『久保ちゃんのSHOWROOMのおさまりが良い…』と思うeidaman。
『水着じゃなくても(ある意味失礼)、この子は衣装とか風景の画だけで、写真集出せそう…』

どう思います?(本日は私的利用の前書きです!)

ともあれ、今後も変わらぬご愛読をよろしくお願いします。


扉画・挿絵⊿募集中!

eidaman

🔖ふりかえる先に―漆―


地下中央エレベーターホール______

ホールから東に抜ける通路に向かって、銃弾の雨が降り注いでいた。

縦に長いホールには、中央に四角い支柱が3本あり、北側2台のエレベーター正面から、南の商業施設の入口へと等間隔に並んでいる。

銃を向ける男たちは、中央の柱に3人、南北に2人ずつに分かれ、東通路からの『侵入者』を要撃している。


通路の両側の壁際から、辛うじて反撃している七瀬と若月だったが、ホールへの突破口を見出せずにいた。

若月から通路を挟んで、銃を構えていた七瀬が、瞼を落とし、細くゆっくり息を吐き出す。


駄目だ!ナナセ!

若月が叫んだ。
が、七瀬は構わず呟き始める。

『…銃口の向きと引き金を引くタイミング…』


七瀬の肩が掴まれて、瞼のスクリーンからイメージが消えていった。


『ナナセ…。無茶は駄目だ』

強い眼差しで見つめる生田だった。
その少し奥で、壁に背中を預けて、苦患に堪える飛鳥が見えた。

ここを切り崩さなくては、地下から脱出することもできない。七瀬は肩にかかる生田の手を払い除ける。

じゃあ、どうしろって言うんです!


突破口も無く、このまま戦っていては、弾切れは時間の問題だった。
敵の数が多い。
先ほどの通路のように、誰かが先行して万一ダメージを受ければ、残る隊員は、重傷の飛鳥を除いて2人になってしまう。
これ以上の戦闘不能者を出すことは、隊の全滅を示唆していた。

消耗を誘って構える敵に、若月が発砲するが、倍以上の銃弾に襲われる。

『クソっ!』

削られていく壁に身を隠しながら、若月が残り少ないマガジンを入れ換えた。


『命を守る戦い方をして…』

そう言うと生田は、七瀬の隣で銃を構える。


乃木坂組の前身の頃、先行隊を務めていた生田にとって、こう言う窮地は今までにもあった。
窮地に陥った時は必ず、圧倒的な力で道を切り開く生駒か、状況をいち速く分析、判断する玲香が、隊を導いてくれた。
全滅の危機が迫った今、生田は2人の姿を思い描き、自らに重ねるのだった。

目には見えないが、確実に背中に迫る死の恐怖に、七瀬も若月も足を捕られそうになっていた。
心なしか動きが単調になり、弾数だけが増えて行く。


(玲香だったら、無謀な囮をつくる作戦は、絶対立てない)

生田は自分自身に言い聞かせていた。

これまで玲香や生駒と、どうやって道をつくってきたか。残りが長くはないリミットの中、生田は繰り返し考える。

(玲香は、目の前の事だけに捕らわれなかった。敵と味方の心理、起こった事象の要因、置かれた環境、次の行動が及ぼす影響…それ以上にも、あらゆる角度から状況を分析していた)


戻れば行き止まりの通路に、数的不利な環境。飛鳥を守りつつ戦う方法…。考えを巡らせる生田に、足元の消火器が目に入る。
生田の脳裏に、淡紅色の花弁と、凛と先を見つめる玲香の横顔が映し出された。

(これだ!)

拳銃を握った生田の手に、力が入る。


『ナナセ、聞いて!』

ホールに銃口を向ける七瀬を掴まえた。


作戦はこうだ。
消火器をホール中央の柱まで投げ、これを銃で撃ち抜き爆発させる。
その間に、エレベーター前の柱の敵に的を絞って殲滅、エレベーターか隣にある非常階段で1階へ出る。

七瀬に作戦を伝えた。

七瀬には、沙友理の能力を使って消火器を中央まで投げてもらう。
それを生田と若月で撃ち抜くのだ。

若月にもジェスチャーで伝えた。


よし、行こ…

生田が合図を出そうとした、その時だった。

七瀬と若月が合図を止めた生田に、視線を戻す。


『エリカ…?』

困惑した表情で振り返り、見つめる七瀬に、うつむいていた生田の顔が上がる。

その潤んだ瞳は、今にも零れ出しそうだった。
『はぁ…』と口元を少し緩ませた、生田の言葉が滲む。


『ナナセ…。花弁の音が聞こえる…。
飛び出せるように備えていて…』

七瀬の顔が再び引き締まった。

戦闘の最中、いつもは見せない生田の表情に、若月は状況を理解した。
七瀬と若月の視線が交わる。




エレベーター前の柱から、東通路に向けて銃を構えた2人の男は、侵入者が姿を現すのを待っていた。

男らの後頭部に、冷徹な銃口が突きつけられる。

『動くな。声も上げるな…。』

氷に覆われる水底から、湧き上がったような声だった。

『1つだけ教えてやる。
視界の開けた場所では、背中にも見張りを立てるものだ…』


淡紅色の光を帯びた眼差しが、容赦なく男らを撃ち抜いた。

ホールにいた男らが、慌てふためきエレベーター前に銃を構える頃、西通路から中央の支柱に向かって、嵐のような銃弾が撃ち込まれて行った。


七瀬と若月は急かさず、中央の支柱を奪取し、南側に残る敵を牽制する。

一方の生田は、飛鳥を抱え、玲香のいるエレベーター前に辿り着いていた。


『待たせた?』

玲香が真顔で聞く。
生田は瞼を落とし、首を横に振った。

『来てくれるって、思ってたから…』


玲香の大きな瞳が、一瞬丸くなる。
直ぐに表情を戻す玲香は、西階段から脱出することを、生田に伝える。

言葉を聞いて、視線を外す生田の表情に、影が落とされていくのが、玲香には分かった。


『玲香…。東階段で下敷きになった隊員たちがいるんだ。
敵を殲滅できれば、助けに行けると思う…』

生田の言葉に、玲香の表情が険しさを増していく。

『エリカ…。気持ちは分かる。
だけど、あの爆破は得体が知れない。
ここに来るまでに敵を尋問した。もしかしたら…』


でも、美彩さんの隊や、増援が来るなら!

抑え切れなかった生田の気持ちが、玲香の言葉を遮った。

玲香にも痛いほど、生田の気持ちは伝わっていた。だからこそ、言葉を選ばずに譴責(けんせき)した。

罠だったって分かるだろ!状況をよく考えろ!


玲香の声が響いた直後だった。
西通路の入口一帯が、連続した爆発音と共に吹き飛ばされていった。

玲香や生田、飛鳥を、一瞬で起こった衝撃の波が巻き込んでいく。
辺りは粉塵が立ち込め、灰色の靄が空間を埋めていった______




______『うぅ…』目を開けた生田の世界は、霧の深い森にでもいるかのようだった。無意識に口から吸った空気に、大きくムセた。
土砂と焼け焦げた臭いが混ざり、袖で鼻と口を覆う。
身体を起こそうとした生田は、胸元の玲香と、隣で激しくムセる飛鳥に気づいた。

『飛鳥…。
    玲香!玲香しっかりして!』

爆風の衝撃から、覆い被さるように倒れていた玲香を、仰向けに抱きかかえる。
苦悶の表情の玲香が、ゆっくり瞳を開ける。


『良かった…。平気?』

心配する生田の声を聞きながら、玲香が身体を起こす。

『…大丈夫か?』


まだ朦朧とした表情で、玲香が生田に聞く。
玲香を見つめながら頷いた。
はっと生田の顔が変わり、飛鳥に駆け寄る。

『飛鳥!しっかり…』

生田は飛鳥を抱きかかえる。 

膝に手を突きながら、立ち上がった玲香は、ホールに降ろされる灰色のカーテンの向こうに、意識を向けた。

数メートル先、中央の柱があった辺りから、粉塵にムセる声が聞こえる。

(若月…  七瀬…)

逸るこころ抑えて、西通路の辺りに意識を向ける。
だが、ここまで援護してくれた隊員たちの状況は、掴めなかった。

悪魔がもたらした束の間の静寂は、ホールの南側から上がる、狼狽した男たちの大声に破られた。


(恐らく、南の建物にいた敵本体の奴らだ…。4人…いや、5人か)

玲香は口を横に結んだ。
粉塵に向けていた眼差しが、再び光の強さを増していく。

振り返った玲香に、飛鳥を支えながら立ち上がり、こちらに視線を送る生田の姿が映った。


玲香は2人に歩み寄ると、生田と飛鳥の肩に顔を埋め、背中に手を回す。


え…?何?

困惑する生田に、玲香はすぅーっと鼻で息を吸って、結んでいた口を開いた。

2人とも良く聞いてね…。
上にあがったら、ここから出る前に、先ず身を隠して


『ちょっと、何言ってるの玲香…』

戸惑う生田の身体を、ぐっと引き寄せ、玲香は足を踏み出す。
よろよろと、生田と飛鳥の身体は後ろに下がり、壁に身を預けた。


通信が繋がったら、助けを求めて。自分たちで建物から出ようとしては駄目

言葉を続ける玲香の横顔を、見つめる生田。視線を合わせずに玲香は続ける。

建物から出るのは、裏口からの方が良い。罠が無いか外から確認して貰って…


『玲香!ねぇ…何言ってるの…』

生田の丸く大きな瞳が、みるみる滲んでいく。
生田の声に、顔を向けた玲香の瞳は、優しく生田を包んだ。


鈴を弾いたような音を、生田は頭上から聴いた。

背中を預けていた壁が、鈍い動きで体の横にずれて、後ろにバランスが崩れる。
よろめく生田と飛鳥は、2、3歩後退りして、尻餅をつくように座り込んだ。

見上げた生田に映ったのは、エレベーターのドアに手をかけ、こちらを向く玲香の姿だった。

その指先は、壁にある『1』のボタンにかけられていた。
ダメ…』生田の絞り出した弱々しい鼻声は、玲香には届かなかった。


みんなを連れて必ず戻る!…だから』

強い意志で固められた言葉が、狭い部屋に響いた後、玲香はホールへ進み、背を向ける。

『だから、

    生きろ…飛鳥、生ちゃん』


振り向く優しい笑顔を、温度を持たない鉄の壁は、無情な動作で閉じていった______
🔖








🔖ふりかえる先に―捌―


『玲香っ…』

閉じられる分厚い扉に、生田の声は遮られた。
薄明かりの蛍光灯の下、モーター音が響いている。

数秒間、心を見失っていた生田は我に返る。

飛鳥に声をかけながら、体を抱え上げて立ち上がった。
調度、鈴が弾かれた音がして、閉ざしていた扉が開く。

踏み出した生田は、飛鳥に告げる。

『ごめん…飛鳥。私、玲香たちを助けに行くよ…』


東階段の隊員たち、助けに来た玲香に反発した自分。もう数秒早ければ、西通路の爆発から逃げ切れたかもしれない。

様々なものを引き摺って、生田が出した答えだった。


苦患に悶える飛鳥が、声を絞り出す。

ご……めんな…さい。…私…の、せいで…


飛鳥の言葉に、生田は息を呑んだ。

階段の爆発物に気がつけなかったのは、自分の失態。
瓦礫で潰された階段を見てから、ここに来るまで、生田は自分を責め続けていた。
それ故、隊員たちの気持ちに気づけなかった。
七瀬は自らを犠牲にしても、道を切り開こうとしていた。
片腕で戦い続け、それでも冷静でいようとした若月は…。

自分を省みるばかりで、隊員たちの思いを、置いてきぼりにしてしまった…。


飛鳥を壁にもたれさせ、座らせた。

『…大丈夫。みんなを連れて、必ず戻るから!』

微笑む生田に、飛鳥は頷いた…。




生ちゃんっっ!!

遠くにする生駒の声に、生田が正面玄関に視線をやる。


建物から出る…。裏口から…。罠が無いか…』玲香の声が走馬灯のように、生田の頭の中で流れた。


生駒ちゃん!…


生田の言葉をかき消す爆発が、腹を空かせた化物のように、黒い煙で一面を飲み込んでいく。


正面玄関の透明の硝子に、薄明かるく残していた世界が、少女と一緒に姿を消した。
灼熱が、ホールの空間に一気に広がり、それを追うようにして、黒い獣の群れがゆるゆると、ホールの中を覆い始める。


正面玄関の黒く濁った空間に、鮮黄色(せんおうしょく)の歪みが走った。

煙の中を貫いて飛び出した生駒は、ホールの中央で力尽きて、両膝を突いた。

『生駒ちゃん!』

生田が駆け寄る。
激しく咳嗽(がいそう)した生駒が、顔を上げる。

『…良かった…。生ちゃん…』


息を切らせて微笑む生駒の顔に、すっと生田の頬が近づいた。


無茶し過ぎ…

生田は、生駒の首もとに顔を埋めた。生駒が背中をゆっくり撫でる。


束の間の安息から離れた生田に、生駒が玲香たちの安否を尋ねる。


『…そうだ!
    みんなに伝えなきゃ…』

生田がインカムの発信ボタンに、手をかけた時だった。


大粒の雨たちが、落ちて来たような銃声が、生田たちの背筋を凍らせた。

続く鉄の雨音は、ビルの裏側の方からだった。


白石隊、襲撃を受けた!…応戦する!

口早な麻衣からの通信だった。
奈々未が聞き返す。

『残党か!?…敵の数は!?』


生田と生駒は、通信に聞き入る。
長い数秒間が過ぎて、麻衣からの返事が帰ってきた。


『…敵は8ほど!
    待ち伏せされたような…』


麻衣の言葉に、渦を巻く煙を見つめた生駒が、よろめくように立ち上がる。


みなみ……。みなみが危ない!』

言葉を残し生駒は、猛スピードで正面玄関に突っ込んで行く。


生駒ちゃん!!

ホールに響いた生田の声では、生駒を止めることはできなかった______





______奈々未から通信が入っていた。

白石隊への襲撃、各隊は最大限警戒して動けとの内容だった。


しかし、どの隊からも応答は無かった。

続けて、西階段付近から、銃声が上がっていた。


各隊、応答しろ!
    みなみ!聞こえるか!?…』

みなみの耳元で、奈々未の声が響いていた。

目の前で起こる刹那の光景に、みなみは応答できずにいた。


生駒を失った2つの隊は、みなみの判断で、西階段を目指した。
ビルの合間から移動を開始した直後、同時に飛び出して来た、無数の影とぶつかった。

アーミージャケットに身包み、顔面は仮面のようなフェイスガードで覆われている。全身黒づくめの影たちは、無機質に銃口を並べていた。
敵は、こちらの数を上回っていた。

みなみは拳銃を構える______




______足元に衝撃が走り、バランスが崩れた。
飛び出した身体は、前転するように、勢いのまま数回転がった。

煙の壁から抜け出した生駒は、うずくまり、2、3度大きな咳を、アスファルトに叩きつける。

顔を上げた生駒に、みなみの背中が見えた。
立ち上がり、駆け出そうとする。
生駒は、小さな背中の向こうに並ぶ、黒い影に気づく。

みなみっ…』

生駒の叫び声は、おびただしい数で、鉛を弾く爆発音にかき消された。


飛ばされた真っ白のシーツが、濡れた泥の上に折りたたまれるように、瞳に映るみなみの体は崩れていった。
🔖








🔖ふりかえる先に―玖―


乃木坂学園に入学してから、すぐに戦闘の訓練を受けた。
最初に気になったのは生ちゃんだった。
出席番号が近いってこともあったけど、
私と同じ『覚醒組』だった。

入学当初から特殊能力が使えて、格闘のセンスと能力のコンビネーションが、群を抜いていた。

次に玲香。花弁を操る綺麗な能力。
相手の陽動や攻撃の回避に長けた、仲間を守る力。玲香の『いざと言うときに頼れる』性格も相まって、すぐにクラスの中心になってたっけ。

入学して目まぐるしく1ヶ月が過ぎた頃、初めて実戦の場に立った。
私たち1年は、前線から一番遠くって、何が起こってるか全然分からなかったけど、そんな中で、みなみと出会う。

肩よりも長い艶やかな髪。黒く愛らしい真ん丸な瞳。小さな鼻。優しい口許。
あまりに戦場に馴染まない容姿と、みなみの様子を今でもよく覚えている。

大きな瞳に涙をいっぱいに溜めて、震える肩を押さえて、それでも懸命に前を向いていた。
心配になって声をかけたら、みなみがすごく怒ったっけ…。

『戦いの場での同情は、惨めなだけ』て…。
見た目とは反対で、意志の強い子。そして、乃木坂への思いも人一倍強かった。

力があるだけで、ずっと心がふらふらしてた私は、みなみに急激に惹かれていったんだ。

それから、みなみを加えて4人は、いつも一緒だった。
勉強するときも、訓練のときも、寮のご飯を食べるときも、色んな話をするときも、休みの日に出かけるときも…。

戦闘では、支援能力のみなみは、前に出ることは少なかった。
でも、ここぞと言う時に一歩踏み出すのは、決まってみなみだった。
みなみは私たちの、気持ちを支える柱になっていた。


入隊して3ヶ月になる頃、私は、実戦を重ねる度に、自分の能力が大きくなっていくのに気づいた。
それは、力だけじゃない。おぞましい狂気をはらんだ能力。
私の意志とは関係なく、膨張する能力に、コントロールできない恐怖を感じるようになっていった。


夜も眠れない日があって、寮の屋上で独り、空を眺める時間が増えた。

その日は満天の星空だった。
星の光る音さえ、聞こえそうな静かな夜。


名前を呼ばれて、背中を丸くした私に、笑いながらみなみが隣に座った。

私の様子がおかしいことに、みなみは気づいていた。
みなみの太陽の能力は、相手の反射する光の音で、その人の状態が分かるんだって。

私には2つの音色があるみたい。
1つは、生命が湧き上がるような音。
そしてもう1つは、暗い渦が全て呑み込むような音なんだって。

みなみの力で、生命の音の方がより大きく響くように、光の旋律を流す。
それで、暗い渦の音を、抑えることができると言う。

真剣な表情で見つめるみなみと、瞳が交わって、思わずみなみに抱きついた。

狂気を抑えれることもだったけど、みなみが私に気づいてくれて、考えていてくれたことが嬉しかった。 
今日だって、こうやって来てくれた。
私は独りじゃないって、やっと思えた。


みなみの身体の温もりは、陽だまりのよう。
心と身体が溶けて、包まれていく感覚に、『ずっとここに居たい』と思った。

向こうの空の色が薄くなるまで、2人で色んな話をした。


いつから始めたか、みなみが乃木坂学園に入学する前のことを、話してくれた。


みなみはお嬢様だった。
でも、ある事件がきっかけで、そうではいられなくなっていた。
その事件の真相を知るために、乃木坂学園に入学したんだと言う。

それは、幼い頃から描き続けた夢と、大好きな親友との未来を、犠牲にする選択だった…。

辺りはまだ暗かったのに、その時のみなみの悲しい表情が忘れられない。

みなみのおかげで、私も入学以前の自分のことを、少しだけ話すことができたんだ。


みなみは、特進クラスのこと、卒業してからのことを話した後、残り少ない空の星を、掴むようにして言った。


『乃木坂の先に、
    私たちの未来に、光をつくろう』


みなみの思いと言葉は、眩しいくらいの希望と、それを掴む為の決意を、私にくれた。


『約束する!
    みなみとこの約束は、絶対に守る!』

白んできた空のせいか、興奮ぎみの私に、みなみの抱擁が頭の中を真っ白にさせた。


大好きだよ…生駒ちゃん


陽だまりから生まれた優しい音は、私の中に渦巻く狂気を沈めてくれる。
これから私の新しい世界が始まる…。
そう思った朝だった______








______嵐のような銃声のせいだろうか。私の世界から音が無くなり、小さな背中がゆっくりと、地面に臥せていくのが見えた。


______大声で名前を叫ぶ。


走り出したが、あと少しのところで左足が弾かれて、身体が地面に打ちつけられた。
私は這いずって、みなみまでたどり着く。

仰向けに抱き起こしたみなみは、額を真っ赤に染めていた。
もう、どこから血が出てるか分からない。

みなみの名前を何度も呼ぶ。

顔をちゃんと見たいのに、目の前がどんどん滲んでいく。

なぜだろう…。
頭の中で、みなみの笑った顔が、みなみといた時間が、いくつも通り過ぎて行く…。


私のことを大好きだと言ってくれた。
私にやっとできた温かい居場所。





(…ロ……セ…)




私も大好きになれた。

ずっと守るって決めた。



(…ウ…ラ……メ…)



誰だ?
私から愛しい人を奪うのは



(…ニ…クメ…)



誰だ?
私から光を奪うのは


(…ノロ…エ…)


もう独りは嫌だ!


(…コロ…セ…)


寂しくなるのは嫌だ!


(…コロセ…)


許さない!

(コロセ!)

許さない!!

(コロセ!!)
 
私ガまた黒くなル…









…みンなぐチゃグチゃにコろシテヤル




🔖

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eidaman