大村敦志「家族法」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「民法典が想定している典型的な家族は、夫婦と未成年子からなる婚姻家族=核家族である。夫婦は相互に同居・協力・扶養義務を負い、未成年子は父母の共同親権に服する。これは、裏を返せば、夫婦は互いに対等の義務を負うが、他の者の支配には服さないということであり、子は親の親権に服するが、それは未成年の間に限られるということである。そして、これは現代法の中心的な起草者であった我妻・中川の家族観でもあった。」

 

「しかし、今日では、このモデルは、二つの対抗モデルによる挑戦を受けている。第一は、家族からの『個』の自立・析出をめざす立場に立つものである。個人のライフ・スタイルの尊重を説くこの立場の論者は、極言すれば、もはや家族・家族法は不要であるとする。弁護士や憲法学者に支持者があるほか、家族法学者にもこれに親近感を示すものは少なくない(例えば、二宮周平など)。第二に、これとは正反対に、家族の復権を主張し、拡大家族に郷愁を抱く立場も根強く存在する。家族法学者にはまれであるが、一部の憲法学者や評論家に支持者がある(例えば、八木秀次、加地伸行など)。特に、少年問題が深刻化している昨今では、この立場の主張の一部は一定の説得力を持つようになっている。」

 

「以上のように、核家族モデルを中央において、左に家族消滅モデル、右に拡大家族復権モデルが存在するわけである。これらは激しく対立しているように見えるが、実際には、家族消滅派が核家族派と妥協しつつ主流派を形成して1996年の民法改正要綱を推進したのに対して、拡大家族派がこれに反対しているという構図になっている。」