城山三郎「ゴルフの時間」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。


「旅と本は、趣味としては平凡かもしれないが、『無所属の時間』の使い方としては一番いい。そして、都会の喧騒から離れ、自然と触れ合い、人と深く付き合うことのできるゴルフもまた、『無所属の時間』を生きる方法としては、最適だと考える。」

「昭和初期の激動の中、金輸出解禁に踏み切って金本位制を復活させた浜口雄幸内閣時の蔵相、井上準之助。日本銀行の生え抜きのエリートであった井上は、アメリカに左遷されて腐っていた時期がある。そんな異国の地で挫折感を噛み締める井上を救ったのが、妻からの励ましの手紙とゴルフであった。」

「勉強熱心であった井上は、ゴルフで癒されるだけではなく、自分の銀行業務とは直接関係のないアメリカの民主政治や時事問題など、多くの知識を吸収すべく、自費でアメリカ人の大学教授を雇って学んでいた。」

「英語に『Where there's a will, there's a way.』という諺や『Capacity never lacks opportunity』という言葉があるが、『無所属の時間』をもち、人間としての能力を磨く努力を惜しまぬものに、道は開けるものである。」

「『正月は、オーストラリアに一人で行って、読書でもする。』首相就任直前の小泉純一郎氏と、大晦日に初めて会った時、こう語っていたので、『小泉さんは、正月に票集めをする政治屋とは異なり、自分なりの『無所属の時間』をもった政治家だな』と思ったが、歴代総理の中でもっとも『無所属の時間』をもっているのは、中曽根康弘元首相である。座禅・俳句・水泳・油絵・ゴルフと、多趣味で知られている中曽根氏は、何事も一人で完結できる能力にたけている人だ。」