「私は、ゲーテの前で朗読しようと思って、『パリへの旅』の第一章を一緒に持ってきていた。だが、彼はそれをひとりで読むことを望んだ。そこで彼は、読書の難しさに触れ、多くの人は、愚かにも、まったく予習もせず、予備知識も持たずに、いきなり哲学書や科学書を、まるで小説同然に読もうとする、と言ってからかった。」
「『みなさんは』と彼はつづけた。『本の読みかたを学ぶには、どんなに時間と労力がかかるかをご存知ない。私は、そのために八十年を費やしたよ。そして、まだ今でも目的に到達しているとはいえないな。』」
ゲーテにして然りか。