エッカーマン「ゲーテとの対話」その7 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「『遍歴時代』を終えたら、もう一度植物学にとりかかって、それと一緒に翻訳を進めることにする。ただ気にかかるのは、またしても深入りしすぎて、悪魔にとりつかれてしまうことだ。大きな秘密が、まだかくされたままになっている。ある程度はわかっているし、予想できることもたくさんある。君にうちあけたいことがじつはあるんだが、妙ないい方になるかもしれないよ。」


「植物は、節から節へ成長していって、最後に花を咲かせ、実を結ぶ。動物界にしてもそれは変わらないよ。青虫、つまり条虫も、節から節へ成長するし、最後に頭ができる。高等動物や人間の場合は、脊椎骨が一つずつつながっていって、頭で終わり、そこに力が集中するのだ。」


「このような個体の場合の現象は、大きな集団の場合にもみられる。蜜蜂にしても、一群の個体がたがいに結合しているわけだが、やはり最終的なあるものを全体的につくりだす。つまり全体の頭とみなしうるもの、蜜の王様を生みだすわけだ。どうしてこういうことが起こるかは、神秘的で曰くいいがたしだ。しかし、これについては、わたしなりの考えはあるのだが。」


「このようにして、ある民族はその英雄を生み、英雄は、半神みたいに、先頭に立って民族の守護と救済にあたるのだ。同じように、フランス人の詩的な能力はヴォルテールに集約されたのだよ。こういう民族の旗頭は、彼らが活躍する時代においては、偉大だ。後世まで、影響をあたえる人物もいるにはいるが、大部分は、他の頭にとってかわられ、次の時代には忘れられてしまうのさ。」


「私は、この深遠な思想を知り得て、嬉しかった。」


 思想はもとより、色彩論、政治、法律、文学、自然科学などなど多彩な仕事をしている。