小室直樹「日本人のためのイスラム原論」その8 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「イスラムの六信五行、イスラム教徒なら、六つの実在を信じ、五つの義務を果たすべし。これがイスラム教の基本の基本である。その六信の一つに教えられるのが、預言者である。すなわち、ムスリムならば預言者の実在を信じろと言うわけだが、では具体的に『預言者を信じる』とはどういうことか。」


「イスラム教ではアダム、ノア、アブラハム、モーセ、イエス、そしてマホメットの六人を重要な預言者とする。が、もちろんこの六人は決して平等ではない。その中には、自ずから序列が存在する。六人の預言者の中で、もっとも重要なのは誰か。もちろんマホメットである。『(マホメットは)もともとアッラーの使徒であり、預言者の打留である』(コーラン)からだ。マホメットこそ神が遣わされた最後の預言者であり、またコーランも神から与えられた最終啓示である。これ以後、二度と預言者が現れることはない。この事実を信じることが、『預言者を信じる』ということに他ならないのである。このような考え方は、もとよりユダヤ教やキリスト教には存在しない。」


「ユダヤ教においては、神は必要に応じて預言者を下したまうと考える。したがって、これで最後ということはない。たとえばエジプトでイスラエル人を救うために神はモーセと預言者にしたし、また古代イスラエル王国が完全に滅びそうになったとき、神はエレミヤを預言者とした。イエスが現れたときも、ユダヤ教徒たちは当初「彼もまた預言者かもしれない」と思って期待した。ところが案に相違して、イエスは律法を軽視し、律法学者を誹謗したものだから、ユダヤ教徒は彼を『偽預言者』として排撃したわけである。」


「では、一方のキリスト教はどうか。新約聖書はコーランと違って『これ以後、預言者は現れない』とは明言していない。明言していない以上は、イエスの後に預言者が現れる可能性はあるわけである。」


 イエスの後に現れた預言者がモルモン教のモルモンであるという。