小室直樹「日本人のためのイスラム原論」その6 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「キリスト教は外面的行動を問題とせず、ただひたすら信仰を求める。そこで求められている信仰とは、具体的にはいかなるものか。イエスは律法学者から『何が最も重要な戒律であるか』と問われて、即座に二つのことを挙げた(『マルコ福音書』)」


「すなわち、第一の戒めは『心をつくし、精神をつくし、思いをつくし、力をつくして、主なるあなたの神を愛せよ』であり、第二の戒めは『自分を愛するようにあなたの隣の人を愛せよ』であると。これに続けて、イエスはこう断言した。『これより大事ないましめは、ほかにない』(同)」


「神と隣人への愛。イエスは、この両者への愛は無条件でなければならないといった。神が人間に対して無条件に無限の愛を注ぐように、人間もまた神や隣人に対して無条件に無限に愛をもたなければならない。分かりやすく言えば、見返りを期待してはならないということである。この愛をキリスト教では『アガベー』と呼ぶ。無償の愛である。この思想はユダヤ教にもあったものだが、アガベーをあらゆる規範の最上位においたことこそがイエスの一大独創であったのだ。」


 キリストの『愛』とアッラーの『慈悲』を比較するくだり