田中康二「本居宣長」その2 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「三十有余年の歳月をかけて『古事記伝』が完成した寛政十年(1798)、宣長は初学者への入門者『うひ山ぶみ』を執筆した。同書は文字通り、初めて学問の山登りをする初心者に向けて、その心得を説いたものである。」


「本文の冒頭には、宣長が設定した学問の範囲が明確に記されている――世に学問の筋はいろいろあって一つのさまではない。そのいろいろとは何かといえば、まず日本書紀の神代記を主として道を学ぶものがある。これを神学といい、その人を神道者という。また、官職、儀式、律令などをもっぱら学ぶものがある。また、もろもろの故実、装束、調度などのことを主に学ぶものがある。これらを有職の学という。また、上は六国史その他の古書をはじめ、後世の書に至るまで、どの筋からともなく学ぶものがある。この筋の中にも、なお分けていえば、いろいろあるだろう。また、歌の学びというものがある。それにも歌だけ詠むのと、古い歌集とか物語の書などを解釈するのと二通りある。」


「宣長は、学問を神学、有職学、古書学、歌学の四つに分類している。このうち、『神学』とは、日本書紀の神代記を中核とした『道』の学問であるという。いわゆる古道学である。道とは何か。『うひ山ぶみ』には、次のように記している――そもそもこの道は天照大御神の道であって、天皇の天下を統治なさる道、四海万国にあまねく通ずる本当の道であるが、ただ日本にのみ伝わっているものである。それがどういう道かというと、この道こそ古事記、日本書紀の二書に記されたところの、神代上代のいろいろな事跡の上に備わっている。」


「道を知るためには古事記、日本書紀を読むのが第一であるが、初学者は最初からそれらの読むのは困難であるから、自著の『神代正語』『直毘霊』『玉鉾百首』『玉くしげ』『葛花』などを読むことを奨励している。」


 小林秀雄の「本居宣長」を読むための事前準備なので丁寧にメモをとる。