「忍土とは、この世のことです。娑婆とか忍界ともいいます。それがこの現実社会だというのです。私たちが毎日生きているこの現実社会は、どこへ行ってもガマンをすることばかりです。自分の思いのままになるところなど一つもありません。電車に乗れば人波にもまれるし、職場に行けば様々な人間関係に気を使います。気をつかうということは、それだけ自分を押さえてガマンをすることです。」
「極端な言い方をすれば、人は朝から晩まで、人と人との間に立って、四方八方に気をつかいながら生きているんです。人と人との間にしか生きられないから〈人間〉なんですね。人間、一人では生きられないんです。」
「ひとりになりたい ひとりはさびしい それが人間だと思います。お釈迦様はこの世を忍土と受け止めております。つまり、自分だけ一人、自由気ままに生きる場所ではないというのです。ガマンをしなければ生きてゆけないのが世の中であり、忍土です。我がまま勝手の許されないところ、それが忍土です。」
娑婆
娑婆とは忍土
忍土だから
たえしのぶところ
この世は苦娑婆
楽娑婆とは
いわない
みつを
誰だったか、小林秀雄だったか、古典は字体(書)とともに読んでその味わいがわかると言ったが、みつをの詩も同じかもしれない。