「サバイバル宗教論」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「宗教とアメリカとのかかわりからいうと、ユニテリアン(父と子と聖霊の三位一体論を否定し、神の唯一性を強調)がアメリカ的キリスト教です。アメリカの大統領は『神にかけて』とよく言います。『キリストにかけて』とは言わない。アメリカには、キリストを『まことの神』ではなく、『偉大な教師』だったと考えるキリスト教のグループがあるんです。これがユニテリアンです。」


「ちなみに、アメリカの大統領は聖書に手をおいて宣誓します。アメリカの大統領は『神』という言葉を使うが、『キリスト』とは言いません。キリストというと、ユダヤ教、イスラーム教徒を排除してしまうからです。ユダヤ教も、イスラーム教も、同じ神を信じているという建前になっていますから、神と言っている分には構わないのです。」


「このユニテリアンがアメリカ・キリスト教の主流です。ユニテリアンは、長老派とか会衆派とかバプテスト派とかメソジスト派といった個々の教派とは関係なく、教派横断的に存在します。要するに、キリストの奇跡物語というのは、古い時代の表象の中で書かれたもので、キリストは偉大な教師だったという考え方です。ある意味では孔子と同じような感じでキリストを見ています。」


「アメリカというのは思想史的には19世紀がない国です。これに対し、ヨーロッパの特徴をつくっているの19世紀のロマン主義です。18世紀に啓蒙主義がでてきましたが、その啓蒙主義だけでは人間の問題は解決しない。ここはやはり戦争と関係してきます。ヨーロッパは多くの戦争を経験することで、人間には非合理な要素があることを感じるようになります。それで、森の生活とか、中世とか、あのころの方がよかったんじゃないかという後ろ向きのロマン主義的な発想が出てきます。しかし、正確に言えば、それは本当の過去ではなく、現時点から解釈された過去であるわけですが。」


「アメリカはこのロマン主義を経験していません。ヨーロッパでロマン主義が流行している時期にフロンティアの開発をやっていました。その意味で、アメリカというのは、合理主義の精神のままずっと21世紀まで来ている国なんです。非合理な要素とか、理屈でわからないもののことがよくわからない。だからアメリカ人は、お金が好きだし、出世が好きなんです。それ以外の価値がわからないのです。九鬼周造が言うような『いき』という感覚などとてもわかりません。『いき』というのは、微分法的な考え方です。何かに到達できるんだけれども、到達する手前でとどまる。接近はするんだけれども、そこには行かない。あくまで近づいていくという考え方。それに対してアメリカ的な考え方では、本当に望むものと一体化してしまう。言いたいことを全部言ってしまうのは、日本の感覚では野暮です。その点では、アメリカというのは全く野暮なんです。」