「いなかのねずみと 町のねずみ」
まるで海外の絵本のような筆づかい、じゃないでしょうか。
きゃんみのるさん、本当にていねいな絵を描かれます。
原作はとても短いお話です。
それが、20ページの絵本になっています。
当然、いろいろなシーンが加わっています。
絵本作家さんが「こんな風に描いたらどうだろう」
と考え抜いた絵が、「えほんや」にはそろっています。
町に着くと、たくさんの人、人、人。
靴と鼠の対比で、一瞬でその状況が見えてきますよね。
草むらの中、右側で首をすくめるいなかのねずみ。
人々の忙しそうな足音が聞こえてきそうな絵です。
そしてさらに、クラクションの音が聞こえてきそうなのが…
町の様子を上空から俯瞰した印象的な一枚。
「おさるのジョージ」の暮らすニューヨークに
似せた都会を彷彿とさせる景観です。
車と、人が小さいながら生き生きとしています。
そして、2匹のねずみはいったいどこに?
iPadで、ぐい~んと画面を大きくしてみてください。
横断歩道のところに、ほら。
こんな電子えほんならではの構図も見逃せません。
ほかにも名場面が山盛りのこの絵本ですが、
最後にこの1枚。
さわぎを聞きつけてご主人様が戻ってきました。
壁にあいているはずの小さなねずみの穴から、
大きな部屋の天井までが、しっかりと見えています。
テーブルの上のワインのびんも、
ねこをつれていくご主人様も…。
そして、2匹のねずみの対照的な表情!
「お、うまく厄介者のネコをご主人様が連れて行ってくれたぞ。
さ、ごちそうの続きだ…」
とでも言いたそうな町のねずみ。
これに対して、いなかのねずみは
「こわくてこわくて生きた心地がしませんでした」
という言葉通りに、冷や汗を流しています。
ドキドキ、ドキドキ…。
子どもたちの心臓まで鼓動のスピードをあげてしまいそうですね。
こうした絵を子どもたちは細部まできちんと見てくれます。
同じお話を何度も読んで、
同じ絵をあきずにずっと眺め続ける。
それは、世界を自分の中に取り込むレッスンなのではないでしょうか。
きゃんさんの素晴らしい絵づくりを堪能してくれるのは
間違いなく、世界中の子どもたちでしょう。
ただ、物語を追えばいいと言うわけではない。
だから「えほんや」では、画家さんと何度も打ち合わせをしながら、
絵を進めていきます。
編集者である自分自身が、このえほんの一番のファンです。
そして、まだまだたくさんの新作が準備中です。
いろいろなタッチの絵柄、素敵な物語が出番を待っています。
お楽しみに!