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SOHO 翻訳家 の ひとりごち

翻訳家になりたいと思ったことも、
翻訳家になろうと思ったことも、一度もないのに…  

ふと気づけば、翻訳でしか稼げないようになっていた...

H28.7.5桜(H28.7.5)
初めての鼻血が、昨年(2015年) 6月1日。

鼻血の原因が鼻腔内腫瘍だと判明したのが昨年9月14日。

以来、最先端の多分割式放射線治療、外科手術、抗癌剤治療と闘病を続け、今年7月4日には全ての積極的治療が打ち切られ、緩和ケアに移行した。

そのときに、余命は1箇月、長くても2箇月と宣告された。

H28.7.8
(H28.7.8)
大学病院から投与されたステロイド剤(プレドニゾロン錠)と止血剤(アトナ、トランサミン)と同じ薬を、隣町のかかりつけの獣医に処方してもらうことにした。
夜中に痙攣が起きた場合に備え、座薬(ワコビタール)も出してもらった。
本人を少しでも苦しませないために、とのことで、下痢の場合は、すぐさま下痢止めの薬(フラジール内服錠、トランコロン)を飲ませることとし、そちらも処方してもらった。


H28.7.15(H28.7.15)
一日、一日、限りなく貴重な時が流れていった。

元気なときは、誰が見ても、とても余命わずかな末期癌患者とは思えないほど、笑顔がこぼれ愛嬌をふりまくルナだった。

でも、着実に腫瘍細胞は、ルナの残された生命力を侵していった。


H28.7.27canadian world(H28.7.27)
調子がよい日と悪い日が、交互に繰り返されるようになった。
調子が悪い日は、多くは下痢の症状を伴っていた。

あれほど大好きだった散歩も、この日を最後に、アパートの隣の児童公園よりも遠くには一歩も行こうとしなくなった。

動けなくなるのと反比例で、私に対する依存心はますます強くなり、常に私から離れず、すぐ近くにいることを望んでいた。

H28.7.29へそ祭り(H.28.7.29 この日が実質的にルナの自力による最後の散歩となった)

ルナに最初の症状があらわれた昨年6月1日、実は、家づくりの最初の計画が流れたあと、建築予定地を変更し、次の計画が始動していた。当初の予定どおりに順調に進んでいたら、新居は昨年中には完成しているはずだった。しかし新たに購入した森の中の土地でも次から次へと難問がたちはだかり、なかなか着工できずにいるうちに雪が降り、春まで工事は延期されてしまった。
雪融け後、ゴールデンウィーク明けから本格的に基礎工事に着工、工事の進捗に伴い、現場に足を運ぶ機会も増えていった。前代未聞からもしれないが、ルナも常に現場に同行し、初めて現場に踏み入れる職人さんたちを驚かせた。
H28.8.2さくらのテラス(H.28.8.2 新居のテラスにて)
森の中にはサクランボの木が自生しており、ルナは、落果した完熟サクランボを食べるのをとても楽しみにしていた。

H28.8.3-2
H28.8.3-1
予定より若干遅れ、今月8月上旬、一部内装工事を残しながらも新居の引き渡しが行われ、新居での生活が始まった。
新居は森の中の一軒家、今までのアパート暮らしとは違い、ベランダからだと、ほとんど段差なく裏庭に出ることができる。まわりの人に気兼ねする必要もない。ルナは自由に好きな時にいつでも外に出られるようになった。それにもかかわらず、ルナは、私のそばから離れたがらなかった。ノーリードで外に出ても、用だけ足すとすぐに戻ってきた。
H28.8.4(H28.8.4)

(H28.8.5)
H28.8.5


(H28.8.8)
H28.8.8

その日も外に出たがったルナをベランダに出してやった。裏庭に向かって歩いて行く姿を確認した。裏庭を見晴らせるキッチンの窓から様子を見ようとのぞいてみると、ひっくりかえって倒れている彼女の姿が目に飛び込んだ。
H28.8.8-2(H28.8.8)
大慌てで裏庭に走った。
ハーフチョークの首輪のチェーンに前脚がひっかかり、身動きとれなくなっていた。

その事件をきっかけに、首輪は外したが、それでもルナは一人だけでは外に出たがらなくなった。私も必ずルナに付いて一緒に外に出るようにした。
H28.8.12(H28.8.12)
調子がよい日も、調子が悪い日も、鼻出血だけは続いていた。
H28.8.15(H28.8.15)

8月21日夜、いつものように裏庭の斜面で用を足した後、ルナはそのまま、スローモーションのように、後脚から草むらの上に崩れ落ちて立ち上がれなくなった。

あわてて駆け寄り、すぐにルナを抱きかかえて、ベランダまで連れ戻した。

H28.8.19(H28.8.19)
ひところは32kgもあったルナ、とても私の力では抱き上げるのは無理だと思っていたのに、意外と簡単に抱き上げられたことに、私の方がびっくりした。

翌8月22日早朝も再び、ルナは用を足した後、崩れ落ちて立ち上がれなくなった。
ベランダまで戻すと、そこで横になった。
しばらく付き合ってそこにいたが、私の方が寒さと眠気で根負けして先に家に入ると、しばらくしてルナも入ってきた。

昼前、ルナは再び外に出たがったため、出してやったら、今度は庭まで出ず、そのままベランダで横になった。
雨が降り出し、風が出始め、身体に雨粒があたるようになると、ベランダから裏庭に出て、そこから玄関側にまわり、軒先で横になった。私もルナから見える玄関先に腰をおろし、パソコンで仕事をした。
その後、ルナは再び自分から裏庭の花壇の方にまわり、草むらの上で横になった。
雨は小やみになっていたため、ルナの好きなようにさせておいた。

しばらくして宅急便の配達があった。するとルナは、裏庭から降りてきて、配達員にあいさつした後、大好きなサクランボの木の下の草むらの上で横になった。
ルナの好きなようにさせておこうと思い、そのままにしておいた。

ところが、それからしばらくすると、本格的に雨が降り出した。
ルナを呼びに行った。
ところがルナは、横になったまま、反応しない。
家に入ろうよ、帰るよ、と促しても、立ち上ろうとする気配すらない。
そこでまた、ルナを抱き上げて連れて行こうとした。

ところが、である。
昨夜も、今朝も、問題なく抱き上げることができたのに、意識がもうろうとしているルナ、全身が脱力しているルナを、どうしても持ち上げることができなかった。

ルナが横になっていた草むらが傾斜地だったせいもあるかもしれない。
急いで大判のバスタオルをとりにいき、下半身にあてがい、持ち上げようとしたが、何をやっても上がらない。
ルナの両脇の下に両手をさしこみ、上半身だけ持上げて何とか動かそうとしたものの、脱力しているルナを1mも引きずって動かすことができなかった。

急いで電話に走り、泣きながら仕事場にいた娘にHelpを要請した。

雨脚は次第に強くなり、傘をさしながら、腕の中にルナの頭を抱えながら、それでも必死に抱き上げようとするが、抱き上げられない。

電話で娘がなんと返答してくれたのか、記憶になかった。
娘は来てくれると言ったのか、記憶がなかった。

家にいたのは私一人だけ。
犬仲間の友だちに頼んで来てもらおうか....

涙がとめどなく流れ落ちた。
無力な自分が情けなくって、ルナに申し訳なくって、たまらなかった。

どれだけ時間がたったのか、わからない。
車がのぼってきた。
娘だった。

二人でルナを担ぎ上げ、家の中に運びいれ、ルナのベッドに寝かすことができた。
濡れた身体をぬぐい、鼻血をふきとり、全身を優しくさすってやった。
ルナの意識レベルはかなり低下しており、もうそのまま逝ってしまうと思われた。