パート紹介シリーズ その4 ~ビオラ~
こんにち(ばん)は、ビオラパートの鈴木(た)です。
さて、今回演奏する「悲愴」。
冒頭コントラバスが、主音と第5音しかない(第3音がないため長調なのか短調なのかわからない)和音を奏でます。
そこに重なるファゴットの重苦しい旋律。
あ、これは暗い、陰鬱な曲だな、と聴衆が理解できたところに更に重なるビオラ。
ついで管楽器。
こうした序奏がしばらく続き、一段落した後に、序奏で予告されていた第一主題をビオラが奏で、提示部が始まります。
ここまで、オーケストラの主役とも言うべきヴァイオリンが一切登場しません。
しかもビオラは2つのパートに分かれて演奏するため、第一主題を弾いているのは半分の人数だけ、ということになります。
普段、ヴァイオリンやチェロの伴奏役に回ることが多いビオラが、いきなりメロディを弾かされる!
しかも人数は半分!
とくれば、緊張しないはずがありません。
その焦り、戸惑いが音に現れ、聴衆に通じることまで計算してビオラにメロディを当てはめたのだとすれば、
さすがはオーケストレーションの大家チャイコフスキーと唸らざるを得ません。
このように、ビオラ奏者としては極度の緊張に襲われながら「悲愴」の第1楽章提示部を弾いています。
目にも留まらぬ忙しさとも言うべき第3楽章も大変なのですが、
プレッシャーはこちらの方が遥かに大きいものがあります。
ご来場の皆さんは、普段黙々と伴奏しているビオラパートが
この曲に限っては冒頭から不安におののいていることも気に留めて、聴いていただくと面白いかも知れません。
蛇足ですが、第4楽章の最後においてもヴァイオリンは早々に離脱してしまいます。
派手な音色を意識的に避け、陰鬱な雰囲気を強調したかった意図は見事に効果を挙げているようです。