労働判例1341号で紹介された裁判例です(東京地裁令和7年3月27日判決)。

 

 

副業などにより複数の雇用主の元で労働するという働き方も珍しくはなくなっている昨今ですが、本件は、複数の事業主の元での労働時間を通算すると割増賃金が発生していたとして請求がされた事案です。

 

 

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判決は、そもそも、原告が主張するような労働に従事していた事実自体が認められないとした上で、複数事業者における割増賃金請求に関する論点についても次の判旨の通り回答しています。

 

 

【判旨】

労働者が複数の事業主の下で労働に従事し、それらの労働時間数を通算すると労基法32条所定の労働時間を超える場合には、労基法38条1項により、時間的に後に労働契約を締結した事業主はその超えた時間数について割増賃金の支払義務を負うとされているが、当該労働者が他の事業主の下でも労働しており、かつ、同所での労働時間数と通算すると労基法32条所定の労働時間を超えることを当該事業主が知らなかったときには、同事業主の下における労働に関し、当該事業主は、労基法38条1項による割増賃金の支払義務を負わないものというべきところ、本件では、原告がA社において勤務していた間、事業主であるA社が、原告からの申告等により、他の事業主の下における労働時間と通算すると原告の労働時間が労基法32条所定の労働時間を超えることを知っていたとは認められないから、この点からしても、被告が原告に対し労基法38条1項による割増賃金の支払義務を負うものとは認められない。