金融・商事判例1749号で紹介された裁判例です(大阪地裁令和7年11月25日判決)。
本件は、借入金につき、平成7年11月の期限の利益喪失から28年以上が経過した令和6年9月、突然、自宅の訪問を受け、債権者(かつて貸金業の登録を受けており、商号変更や吸収合併を経て現在の商号および組織となったが、遅くとも平成21年12月以降は貸金業の登録の更新をしておらず、すでに締結した貸付の契約に基づく取引を結了する目的の範囲内で貸金業者とみなされている)の従業員と思しき者から返済を求められた債務者が消滅時効を主張したものの、4〜5分ほど返済を求められ続け(「京都のときにお金借りたことありますか。」と聞かれ、「あります。」と答えると、「借りたもんは返さなあかんから、とりあえず1週間以内に70万円少し(言われた正確な金額は覚えていない。)振り込んでくれ。」と言われ、「もうそんな古い話は分からないんで、もう時効やと思うんですけど。」と言ったが、「借りたもんは返してくれ。」と押し問答となった)、その後、貸金の返還請求訴訟も提起されたが、債務者が消滅時効を援用し、請求放棄されたという事案において、債務者が、債権者に対して、消滅時効にかかっていた本件化資金を請求し、また訴訟提起した行為が不法行為に当たると主張して損害賠償請求したという事案です。
【判旨】
・貸金業者が、借主に対し貸金の支払を請求し、借主から弁済を受ける行為は、貸金業者が当該貸金債権が事実的、法律的根拠を欠くものであることを知りながら、又は通常の貸金業者であればそのことを容易に知り得たのにあえてその請求をしたなど、その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合には、不法行為に当たるものと解される(最高裁平成21年9月4日第二小法廷判決・民集63巻7号1445頁)。
・民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、当該訴訟で提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて同訴訟を提起したなど、同訴訟の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くときには、同訴訟の提起は相手方に対する不法行為に当たるものと解される(最高裁昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁)。
・①債権者はみなし貸金業者であること、②本件貸金債務の消滅時効の起算点である平成7年11月29日から令和6年9月までに28年以上が経過していたこと、③債務者は、債務者宅において債権者の従業員から本件貸金債務の返済を求められたのに対し、時効を主張したこと、④同従業員は、その主張の後も4~5分ぐらい上記返済を求め続けたこと、⑤その後、債権者は、本件貸金債務の返済を求める本件訴訟を提起したことなどの事情が認められる。これらによれば、債権者は、本件貸金債務について、消滅時効が完成し、しかも、債務者から時効が主張されたことを認識しており、法的根拠を欠くことを知りながら、あえて返済を求めた上、原審本訴を提起したものであるといえるから、これらの行為は、社会通念に照らして著しく相当性を欠くし、また、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものというべきである。
武富士による貸金返還請求,弁済金の受領について元代表取締役に不法行為があったものと肯定された事例 | 弁護士江木大輔のブログ