判例時報2653号で紹介された裁判例です(東京地裁令和9月26日判決)。

 

 

根強い批判はありつつも、夫婦の一方が第三者と不貞行為をした場合、夫婦の他方は第三者に対して不法行為に基づいて慰謝料請求することができるというのが現在の確立した判例です。

この場合の不貞行為とは典型的には肉体関係を持つことをいいますが、本件では、被告が、原告の夫から提供された精子を用いて顕微授精を受けて子を出産したことが(被告は、原告の夫と仕事上の付き合いのあった未婚の女性であったところ、原告夫に精子の提供を依頼し、原告がこれを承諾した)、原告に対する不法行為となるかが争点となりました。

 

 

【判旨】(不法行為責任を肯定し慰謝料200万円を認容)

・被告は、原告夫には配偶者(原告)がいることを認識しながら、原告夫に精子の提供を依頼し、原告の承諾を得ることなく、原告夫から提供された精子を用いて顕微授精を受け、双子の子を出産したことに争いはない。

・このような被告の行為は、第三者が夫婦の一方の配偶者と性的関係を持った場合と同じかそれ以上に、他方の配偶者の婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的利益を侵害する行為というべきである。なぜなら、被告の上記行為は、直ちにいわゆる不貞行為に該当するものとはいえないとしても、特定の男女における妊娠を導く点で不貞行為と共通し、また、子をつくる男女の関係は、特段の事情のない限り、単に性的関係を持つことを超えた親密なものであるとともに、両者間に新たな共同生活関係を築こうとするものだからである。したがって、被告の上記行為(一方の配偶者の承諾がないことを認識しながらその他方の配偶者との間で子をつくる行為)は、原告に対する不法行為を構成する。

 

(なお、本件では、被告と原告夫の直接の不貞行為を証するだけの証拠まではなかったようですが、その他の事情から被告と原告夫とは交際し、子をつくるに至り、子の出生後には家族同様の関係を築く関係にあったことは明らかであると認定されています)

 

 

不貞行為をした第三者に対する慰謝料請求に関する裁判例としてはどのようなものがあるでしょうか? | 弁護士江木大輔のブログ