判例時報2651号で紹介された裁判例です(大阪地裁令和7年3月14日判決)。

 

株式が共同相続されても、当然に分割されるものではないというのが判例の立場です(最高裁昭和45年1月22日判決)。900株の株式につき、法定相続分3分の1づつの子3名が共同相続したとしても300株づつ取得するわけではなく、1株につき3分の1づつの準共有という状態となります。

 

 

本件は、実父の株式を共同相続し、その後子の一人が全部を相続するという遺産分割審判が確定したという事案で、たという事案ですが、それ以外の相続人が相続発生後に生じた配当金について自己の相続分に応じて支払うように信託銀行(株式の株主名簿管理人)に対し請求したという事案です。

 

 

請求した相続人らが拠り所どころとしたのが、相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないとした判例(最高裁平成17年9月8日)でした。

 

 

相続人が数人いる場合に,相続開始から遺産分割までの間に発生した遺産であるアパートの賃料について | 弁護士江木大輔のブログ

 

 

他方で、投資信託を共同相続した相続人の一人は、相続開始後に発生した収益分配金等について、単独でその法定相続分の払戻しを請求することができないとした判例(最高裁平成26年12月12日判決)もあります。

 

 

共同相続された委託者指図型投資信託の受益権につき相続開始後に収益分配金等が発生した場合の法律関係 | 弁護士江木大輔のブログ

 

 

本判決は、次のような点を指摘して、共同相続された株式につき、相続開始後に配当金支払請求権が発生した場合、当該債権は相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の一部が、発行会社等に対し、自己の相続分に相当する金員の支払いを請求することはできないとしています(請求棄却・確定)。

・株式は、株主たる資格において会社に対して有する法律上の地位を意味し、株主たる地位に基づいて、剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号)、残余財産の分配を受ける権利(同項2号)などのいわゆる自益権と、株主総会における議決権(同項3号)などのいわゆる共益権とを有するのであって(最高裁昭和42年(オ)第1466号同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号804頁参照)、共同相続された株式は、相続開始と同時に当然に共有になるというべきである(最高裁昭和42年(オ)第867号同45年1月22日第一小法廷判決・民集24巻1号1頁、最高裁平成23年(受)第2250号同26年2月25日第三小法廷判決・民集68巻2号173頁等参照)。
・そして、配当金支払請求権は、上記のとおり株式(株主権)の内容を構成する剰余金の配当を受ける権利が具体化したものであるから、当該債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の一部が、発行会社等に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することはできないと解するのが相当である。
・これに対し、原告らは、平成17年判決を援用し、株式の配当金支払請求権は、法定果実であり、遺産である株式とは別個の金銭債権として当然に相続分に応じて分割されるものと主張する。
・しかしながら、配当金(株主権)の内容を構成する剰余金の配当を受ける権利が具体化したものであって、その使用対価として生じるものではないから、当然に相続分に応じて分割されることはいい難い。そして、上記のような株式に含まれる権利の内容や性質に照らすと、当該剰余金の配当を受ける権利が具体化した配当金支払請求権は、可分給付を目的とする金銭債権であっても、株式自体と同じく可分債権には当たらないものと解するのが相当である。平成17年判決は、可分債権である賃料債権について判示したものであって、本件に適切なものではなく、原告らの上記主張が採用することができない。