判例タイムズ1545号で紹介された裁判例です(東京高裁令和7年10月30日判決)。
本件は、暴力団員である被告人がそのことを秘して自治体から露店の出店許可を得たという詐欺罪の事案において(詐欺罪の成立については争いがない)、当該店舗で売り上げた売上金が組織犯罪処罰法第2条3項の「犯罪収益に由来する財産」として没収、追徴の対象となるかが争われました。
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
第2条3項 この法律において「犯罪収益に由来する財産」とは、犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。
1 審判決は、
①「犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産」は、「犯罪収益と同視できる程度の犯罪収益との結び付きが必要」であり、「取得した財産と犯罪収益との結び付きの程度、犯罪収益と結び付いた財産として特定し追跡することの可否、犯罪収益以外の他の財産が混ざって犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産の場合には犯罪収益に対応する額又は数量等に相当する部分の特定の可否等の観点から判断すべきである」
②本件売上金は、露店を出店する権利の保有のみでは得ることのできない財産であり、犯罪収益以外の財産である食材や労働力などを用いて調理した玉こんにゃくの対価として受領するもので、令和 6 年 4 月 13 日及び同月 14 日分の出店料が 620 円であるのに対し、玉こんにゃくの仕入代金が 1 万 2000 円であることも踏まえると、調理した玉こんにゃくの対価という色彩が強いこと、露店出店許可を得ずにした露店で商品を販売すること自体は、直ちに犯罪となるわけではなく、詐欺が本件売上金の不可欠の前提になるとまではいえないことから、
本件売上金は犯罪収益と同視できるほどに犯罪収益との結び付きが強いとはいえず、本件売上金のうちどの部分が露店を出店する権利に基づき生じたものであるのか対応する額や数量等を特定することもできないとし、犯罪収益に由来する財産に該当しないとしました。
控訴審判決はつぎのとおり説示して、本件売上金が「犯罪収益に由来する財産」に当たるものと判断しています。
【判旨】
・「露店を出店する権利」の申請行為も許可処分も、露店の営業が現実になされることを前提としており、両者を切り離して考えることは困難であるし、それを「露店を出店する権利」と呼称することは差し支えないが、単に出店する(公園の一部を占有使用する)ことだけを指すものではなく、この点は 1 審判決も同様の認定をしているものと解される。また、許可された期間の経過により当該権利は消失するのであるから、被告人らも、当該権利自体を目的とするのではなく、実際に営業して売上金を不正に得る目的で「露店を出店する権利」を詐取したものといえる。
・したがって、「露店を出店する権利」とこれに基づく露店営業は、犯罪行為により収益を得るという機能的・経済的側面から見れば密接不可分の関係にあって、社会的にはほぼ同視できるものともいえ、露店営業によって本件売上金がもたらされるのであるから、「露店を出店する権利」が生み出す実質的価値として特定されるのが本件売上金であるという関係にある。
・このような本件の事実関係の下で、組織犯罪処罰法の立法趣旨等にも照らすと、被告人が得た本件売上金は、「露店を出店する権利」の保有又は処分に基づき得た財産として、犯罪収益に由来する財産に当たるというべきである。なお、この露店営業に関連して、玉こんにゃくの仕入代金や露店営業に係る人件費等も必要となっているが、これらは、「露店を出店する権利」の行使に通常随伴する性質のものであって、その権利の内実等にも照らすと、本件売上金の全体が「露店を出店する権利」の保有又は処分に基づき得られた財産であるということを妨げる意味を有しない。