報道された事例についての第一審判決となります(東京地裁令和7年4月25日判決 判例時報2644号など)。

 

 

【争点】
(1) 相乗り出品者が相乗り出品する際に、商品詳細ページの商品の販売に特定の資格が必要である場合、相乗り出品者が当該商品を販売する資格があることを確認し、資格を有しない出品者の出品を排除する義務の存否及びその違反の有無
(2) 相乗り出品者が相乗り出品する際に、相乗り出品者が相乗り出品しようとする商品が商品詳細ページの商品と同一のものであることを確認し、同一でない商品を排除する義務の存否及びその違反の有無
(3) 相乗り出品者が当該商品を販売する資格を有していないことを知り又は知ったと認められる相当の理由がある場合、合理的期間内に相乗り出品者の資格を調査し、資格を有しない出品者の出品を削除する義務の存否及びその違反の有無
(4) 相乗り出品者が相乗り出品した商品と商品詳細ページの商品とが同一でないことを知り又は知ったと認められる相当の理由があった場合、合理的期間内に当該偽造品を削除する義務の存否及びその違反の有無
(5) 合理的な理由なく出品を削除しない義務違反の有無
(6) 相乗り出品業者から偽造品を購入した消費者が、当該商品を正規品と誤解して書き込むなどした事実誤認に基づくカスタマーレビューを適時かつ適切に削除する義務の存否及びその違反の有無
(7) 本件免責条項による免責の可否
(8) 損害の額

 

 

【判決要旨】

争点(1)について 

・本件契約は、被告が、出品者に対し、本件サイトへの商品の出品を可能とするサービスを提供し、出品者がその対価として各種手数料等を支払うことを内容とする契約である。本件サイトは、出品の際に、出品者の事業規模等の属性、所在地を問うことなく出品が可能であること、また、出品者と購入者を媒介する小売店等が存在する必要はなく、商品の外装など実店舗においては所与の前提となる商品情報が限定されるなど、実店舗と比較すれば偽造品等の不正な出品が容易な構造となっているところ、被告は、このような構造下にあるオンラインストア・プラットフォームへの出品サービスを提供し、出品者からその対価を収受するのであるから、出品者の適正な販売機会を確保するために、これを阻害する不正な出品を監視し、取り締まるなど、不正行為への対応を行う義務を、本件契約上の義務として出品者に対して負うものと解される。
・しかし、薬機法39条1項は、医療機器等の利用者の安全性確保の観点から医療機器の販売者に対して規制を加えるものであって、被告のように、医療機器販売者に販売の場を提供する立場にあるプラットフォーム事業者に対し、一定の義務を認める根拠となるものではない。同規定は、医療機器を利用する利用者の安全性確保を目的とするものであって、同規定の目的に、医療機器販売者の適正な販売機会の確保を求める趣旨を含むものとは解されないから、同規定を参照しても、被告が、特定保守管理医療機器を出品させる際に、薬機法上の販売許可を得ているかについて確認する義務を、出品者に対して負うとはいえない。
 被告は、出品者の適正な販売機会を確保するために、これを阻害する不正な出品を監視し、取り締まるなど、不正行為への対応を行う義務を負うものの、義務の履行としていかなる措置を講じるかについては、販売許可の提示を求めることに限定されるものではなく、販売許可の提示を求める場合であっても、その時期や態様を含め、対策の実効性及び費用対効果を考慮する必要も生じるのであって、具体的な施策は事業者である被告の合理的な裁量に委ねられるものと解される。そうすると、被告が、本件契約から導かれる具体的義務として、原告X1社に対し、一義的に、本件商品の出品時に出品者の販売許可の有無を確認する義務を負うということはできない。

 

 

争点(2)について

・被告が、出品者の適正な販売機会を確保するために、これを阻害する不正な出品を監視し、取り締まるなど、不正行為への対応を行う一般的な義務を負うとしても、相乗り出品方式に伴って生じる弊害に対してどのような措置をとるかは、事業者である被告の裁量に委ねられているのであって、必ずしも事前の予防策を取ることが被告に義務付けられているとはいえない。そのため、被告は、相乗り出品者の出品時に商品の同一性を確認する具体的義務を負うとはいえない。

 

 

争点(3)について

・薬機法上の販売許可を有しない出品者が販売許可を有する出品者の出品に相乗り出品した場合、出品した商品が同一であれば、販売許可の有無の相違によって価格競争力に著しい差異が生じ得ることは実店舗においても生じる問題であって、相乗り出品の特性から生じる問題とはいえないところ、実店舗における販売の場を提供する事業者について、対購入者ではなく、販売資格を有する出品者に対して、販売許可のない商品を同一の売り場から排除する義務を負うものとは解されない。

・また、出品した商品が同一でないとすれば、同一でない商品の出品を同一商品として販売することを制限することで販売許可を有しない者の出品を排除する目的は達成できる。
・以上によれば、商品の同一性の点を考慮することなく、被告において販売許可がないと知り得た事業者について、出品を排除するべき義務を負うとは認めらない。

 

 

争点(4)について

・本件サイトは、複数の出品者が同一商品を一つの商品詳細ページに出品する「相乗り出品方式」を採用している。オンラインストア・プラットフォームの特性上、購入者はパッケージや包装等によって商品の区別を行うことができないから、同一の商品詳細ページに出品される商品が同一であることは、オンラインストア・プラットフォームを利用する購買者にとっての前提となるだけでなく、オンラインストア・プラットフォームへの出品者にとっても、同一の商品であることを前提に同一ページ内で競合して販売活動を行うのであるから、適正な販売機会を維持するための前提条件となるものといえる。
・そして、本件サイトが相乗り方式を採ることで、商品詳細ページに記載された商品とは異なる商品(異なる商品)が相乗り出品された場合には、異なる商品が同じ商品詳細ページに掲載され、異なる商品が同一商品であると誤認されることなどにより、商品詳細ページに記載された商品の購入が妨げられる弊害が生じることは容易に想定される。
・他方で、商品詳細ページの商品情報の変更には被告の承認を要し、商品詳細ページの変更について一定の権限を有するブランド所有者であったとしても、異なる商品が出品されていることを購入者に注意喚起し、購入を控えるよう呼びかける文章を掲載するなどした場合、一出品者に固有の情報を記載したポリシー違反に該当するものとして、商品詳細ページが削除されることとなる。
・そうであれば、出品者において、上記のとおり想定し得る弊害を回避する手段は著しく制約されているところ、このような弊害は、被告が採用する相乗り出品方式という販売手法に起因するものであるから、被告は、出品者の適正な販売機会を確保するために、これを阻害する不正な出品を監視し、取り締まるなど、不正行為への対応を行う義務の一内容として、上記弊害が生じないように対策を講じる義務を負うというべきである。

・相当な件数への対応を求められているとしても、複数の出品者間で商品詳細ページを共有する相乗り出品方式を採用しているのは被告であって、当該方式に伴って生じ得る弊害を想定し、事前の防止策や事後の簡易な解消策等を講じてこれを出品者に周知することは可能であったと考えられるところ、被告は、令和3年9月当時においては、ゲーティングシステムも、薬機法上の販売、貸与業許可を受けていることを証する書面の提出を求める措置も未だ講じていなかったのであり、このような状況下において、偽造品が相乗り出品しているとの具体的な申告に対し、調査を行わなかったことは、出品者の適正な販売機会を確保するために、これを阻害する不正な出品を監視し、取り締まるなど、不正行為への対応を行う被告の義務に違反したものといわざるを得ない。

 

 

争点(5)について 略

 

争点(6)について 略

 

争点(7)について

・本件免責条項は、被告と不特定多数の出品者との間の取引で用いられる定型約款(民法548条の2柱書)であると解される。同条2項は、「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす」と定めるところ、これは、平成27年法律第44号による改正民法施行前に締結された契約にも適用されるから、平成23年5月に締結された本件契約にも適用される(同法改正附則33条1項)。しかし、同改正民法施行前に締結された定型約款のうち、同改正前の民法の下において有効であったものは改正後もなお効力を有すると解されるから(同法改正附則33条1項ただし書)、本件においては、本件免責条項が、同改正前の民法下において効力を有していたといえるかについて検討することとなる。
・本件免責条項の前段は、「本契約に関して出品者又は出品者の関連会社が行った投資の補償、回収又は賠償の費用、ならびに本契約に起因又は関連する利益、収入、事業もしくはデータの損失又は懲罰的もしくは間接的損害」という広範囲かつ抽象的な損害について、その種類を問わず、損害発生の可能性についての被告の主観的態様を問わず、損害の法的根拠も問わず、被告が一切免責される規定であるから、出品者の権利を制限し、その利益を一方的に害する内容であるといわざるを得ない。本件契約が大規模なオンラインストア・プラットフォームにおける出品契約であって、取扱商品、サービスの対象も多種多様であることからすれば、被告の負担する損害賠償責任も甚大になりかねないリスクがあり、これを適切に制御して事業を継続するために、一定範囲の損害を免責対象とすることに合理性があることは否定できない。

・しかし、前段に記載された損害は広範囲かつ抽象的であり、これらの損害すべてについて、損害の性質によって合理的範囲に限定することなく、被告に故意又は重過失が認められる場合にまで一切免責されるとする点については、本件契約が大規模なオンラインストア・プラットフォームにおける不特定多数の出品者との間に適用される定型取引であり、画一的処理の要請が強いことを考慮しても、取引上の社会通念として許容される範囲を超えるものであって、上記改正前民法においても、信義則に照らし、その効力を否定されるべきものと解される。そうすると、民法548条2項の適用により、本件免責条項の前段につき、少なくとも被告に故意又は重過失のある場合については、合意しなかったものとみなされる。
・なお、原告らは、本件免責条項の前段と後段が整合していないとして、全体的に無効である旨を主張するが、前段は故意又は重過失によらない一般的な損害賠償責任を定めた規定であり、後段は故意又は重過失の不法行為以外の損害額を定めた規定であると解することも可能であり、本件免責条項全体を無効であるとはいえない。

・被告が、原告X1社の申告に対して調査を行わなかった点については、意図的な扱いとはいえないとしても、被告のTS及びフォーム構築に係る組織的判断に由来するものであるから、その過失を軽度ということは困難である。

・ 削除商品①は、被告において、本件商品の価格誤設定の可能性が検出されたことにより出品停止措置が実施され、これに対して原告X1社から誤設定ではない旨の申告がされたにもかかわらず、合理的な期間内に出品停止措置が解除され、その旨の通知がされなかったものである。出品停止措置解除の通知までに要した期間は46日~73日であるところ、これらは、合理的期間内であるとはいえないものの、被告が意図的に解除通知を遅らせた事実は認められず、また、上記の遅滞期間が合理的期間を著しく超過したともいえないことに照らせば、被告に重過失があったとまではいえない。

・被告は、原告X1社から異なる商品が相乗り商品として出品されている旨の申告を受け、異なる商品の削除を求められたにもかかわらず、異なる商品が相乗り出品されているか否かについて調査を行うことなく、本件商品の商品詳細ページ全体を削除し、かつ、原告X1社からの追加説明や抗議を受けた後も、その申告に不備があるとして、それ以上の対応を行うことなく、削除商品②の削除を維持したものである。そうすると、被告は、原告X1社の出品した削除商品②を合理的理由なく削除し、かつ削除を求めていない旨の追加説明に対しても対応することなく削除を維持したことで、義務②に違反したものであり、この被告の対応は、上記(2)アのとおり、被告が構築したTS及びフォームにおける画一的な対応を基礎とした対応であって、被告に故意又は少なくとも重過失があるものといえる。

 

 

争点(8)について 略