判例時報2642号で紹介された裁判例です(東京地裁令和6年12月3日判決)。

 

 

本件は、土地の売買契約につき、媒介した宅建業者の調査義務が問題となったものです。

 

 

売買契約の対象となった土地は、当該自治体において道路計画の対象となっており(なお、この点が宅建業者が説明義務を負う事項ではなかったことについては当事者間に争いなし)、このことは、駅名などで検索をかければ自治体のサイトにたどり着いて容易に判明し得たものでした。

売買契約締結後に、計画が判明したことから、売買契約は合意解除されましたが、媒介契約に基づいて報酬が請求されたのに対し、上記のような事情から調査義務を怠ったものである(債務不履行)と反論されたという事案です。

 

 

裁判所は、宅建業者が説明義務を負う宅建業法35条の重要事項は買主の利益保護のため最低限の説明義務を定めたものであるから、具体的な取引においては、買主から特に調査の依頼を受けた事項や宅建業者において知っていたか容易に知ることができた事項のうち買主の判断に影響を及ぼす情報については、信義則上、買主に対し説明すべき義務を負う、このような情報については、媒介契約に基づく媒介業務として調査をすべき義務を負うと指摘しています。

そして、調査義務の存否や違反の有無については、要求される調査内容、調査方法の必要性、合理性、調査により的確な情報を得られる可能性の有無、程度等を総合的に判断すべきであるとした上で、本件については次のとおり指摘して、結果的に本件において宅建業者としての調査義務に反する事実はなかったとしています(報酬請求の認容)。

・本件計画は、住宅を建築する予定で土地を購入する者としては土地の購入か無意味になる恐れがあるから、計画の実現可能性やその時期について確実であるか否かに関わらず、宅地の購入に一定の影響を及ぼすものである。

・しかし、宅建業者が行う調査は多岐にわたるものであって、調査義務が課されていない事項については何らかの端緒を得て行うのが通常であるといえるところ、本件では、売主は本件計画を認識しておらず、宅建業者による市役所での調査によっても本件計画は判明せず、被告側においても売買契約締結当時まで本件計画を知らなかった。

・宅建業者は被告から道路計画について調査までの依頼は受けておらず、その調査・説明義務を生じさせるものとはいえない。

・宅建業者が行う調査の方法についてはその合理的な裁量によるところ、通常は、的確な資料を入手したり、担当職員への口頭での確認、相談が可能である役所での調査を行なうのであれば、それによって必要な情報が得られるであろうと考えるのは必ずしも不合理ではないのであり、それに加えて端緒がないのにインターネットでの情報検索をしなければならないというまでの根拠に乏しい。駅名などで検索をかければ自治体のサイトにたどり着いて容易に判明し得たことからは、そのような調査をした方が望まししかったとまでは言えるとしても、確実性が高い役所での調査に加えてインターネットでの情報検索までしなければ調査として不合理であったとはいえない。