判例タイムズ1539号で紹介された裁判例です(東京高裁令和6年12月6日判決)。
臓器移植法12条1項は、臓器移植のあっせんを業として行うものは厚労相の許可を受けなければならないと定め、これに違反した場合は1年以下の拘禁刑若しくは100円以下の罰金又併科するものとしています(同法22条)。
臓器の移植に関する法律
(業として行う臓器のあっせんの許可)
第12条1項 業として移植術に使用されるための臓器(死体から摘出されるもの又は摘出されたものに限る。)を提供すること又はその提供を受けることのあっせん(以下「業として行う臓器のあっせん」という。)をしようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、臓器の別ごとに、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
本件は、無許可で臓器移植のあっせんをしたとして刑事責任が問われた事案ですが、国外での臓器移植のあっせんであったため、法12条1項が国外での臓器移植のあっせんについても適用されるのかが争点とされました。
【判決要旨】(積極)
・臓器移植法12条1項は、業として移植術に使用されるための臓器を提供すること又はその提供を受けることのあっせんをしようとする者は、臓器の別ごとに、厚生労働大臣の許可を受けなければならないと定めるところ、同法の目的や基本的理念が、移植医療の適正な実施、臓器提供の任意性の確保、移植術を受ける機会の公平性の確保等にあり(同法1条、2条)、国外における移植術に関しても、許可を受けない者が業として臓器のあっせんを行った場合には、原判決が指摘するとおり、前記のような臓器移植法の目的や基本的理念に反する種々の弊害の生じるおそれがあることに鑑みれば、あっせん行為の一部又は全部が国内で行われる限り、それが国外における移植術に関するものであっても、臓器移植法12条1項の定める厚生労働大臣の許可が必要であると解するのが相当である。
・かかる解釈は、同条項の文理上、単に「移植術に使用されるための臓器」と規定され、「移植術」が日本国内で行われるものに限定されていないことにも適合する。
・さらに、臓器移植法の施行直前の平成9年(1997年)10月13日付けで厚生省保健医療局長から発出された通知「臓器のあっせん業の許可等について」(健医発第1353号)が「(法12条1項にいう)臓器のあっせんの具体的内容としては、①臓器の提供者の募集及び登録、②移植を希望する者の募集及び登録、③臓器の提供者、臓器提供施設、移植実施施設等との間の連絡調整活動などがあり、これらの全部または一部を業として行う場合が臓器のあっせん業に該当する」とし(原審甲14等)、国内で移植術が行われる場合に限定するような趣旨はうかがわれないこと、2012年(平成24年)4月に発行された厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室監修の「逐条解説臓器移植法」には、前記の保健医療局長通知の引用に続けて、「例えば移植希望者の募集等を行い、海外の医療機関での受診を支援するような活動についても、臓器提供者とのマッチングを行わなかったとしても、これを反復継続して行えばあっせん業に該当すると解される。」と記載されていること(原審甲55、弁42等)などに照らし、前記解釈は、臓器移植法の所管官庁である厚生労働省の解釈とも整合するものとみられる。
また、本件では「あっせん」の意義についても争点となりましたが、裁判所は次のように指摘して本件における被告人の所為が「あっせん」に該当することを肯定しています。
「所論は、①臓器移植法12条1項にいう「あっせん」とは、他の法令における「あっせん」又は「周旋」の意義に照らしても、臓器提供施設ないし臓器提供者と移植実施施設ないし移植希望者との間に入って仲介行為を行うことをいい、その双方の依頼又は承認が必要であるところ、被告人が被告法人の業務として行った本件各行為は、移植実施施設と移植希望者との間の仲介行為に過ぎないから、同条項の「あっせん」には該当しない、と主張する。しかし、同条項の「あっせん」の意義を所論指摘のように解すべき必然性はなく、移植実施施設と移植希望者との間に入って仲介を行った場合でも、前記のような臓器移植法の基本的理念等に反する弊害の生じることが想定され、また、同法12条1項が「臓器を提供すること又はその提供を受けることのあっせん」、すなわち「提供すること」と「提供を受けること」の双方又は一方についての「あっせん」と規定していることを踏まえて、移植術を受けることを希望する者(移植希望者)の募集・登録、移植術を必要とする者と移植術を行う医師又はその所属する医療機関(移植実施施設)との間の連絡・調整等の行為が、同条項にいう「提供を受けることのあっせん」に含まれると解するのが相当であると判断したものと解される原判決の判断に不合理なところはない。同一ないし類似の文言であっても、各法令の目的、趣旨等に応じて、その意味内容が異なり得ることは当然であって、各法令の規制対象となる行為ごとにあっせん行為の内実が異なり得るとした原判決の判断にも誤りはない。」