判例時報2636号で紹介された事例です(旭川地裁令和6年7月25日判決)。
本件は、ツイッター(現X)になされた投稿について名誉毀損であるとして損害賠償が請求された事案ですが、投稿したのが被告であるかどうかが問題とされました。
投稿者のアカウントのユーザー情報には、被告が契約する携帯電話会社の被告メールアドレス(いわゆるキャリアメール)が登録されており、投稿がなされた時間帯のログ情報が記録された時刻及びその際のIPアドレスは、被告が自宅に設置し使用するWi-Fi機器に割り当てられたもので、Wi-Fiを利用するにはID及びパスワードの入力が必要という状況でした。
状況的にはクロですが、被告は、アカウントに登録されたメールアドレスは、第三者も知り得るもので第三者が勝手に登録できるものであるし、Wi-Fi機器のIDとパスワードは自宅内に貼っていたほか、自宅外の物置にも、屋外での畑仕事の際にタブレット端末でインターネットに接続し調べ物をする際、端末の不具合でパスワードを何度も入力しなおさなければならない状況であったため、同様にID等を貼りだしていたことから、被告以外の第三者が、本件アカウントに被告のメールアドレスを登録し、被告方のWi-Fiを利用していた可能性があると主張しました。
判決は、次のとおり指摘して、投稿者は被告であるとし、投稿は原告の名誉を毀損するものであるとして損害の賠償を明示しました(認容額55万円)。
・ログ情報に本件IPアドレスが記録された時刻は、平日では、午後7時台から翌午前7時台までである。
前記の時間帯は、被告の勤務時間外で通常在宅していると考えられる時間帯である。また、ログ情報には、平日夜間及び翌朝の2回本件IPアドレスが記録されている日が複数みられるところ、その時刻及び頻度を踏まえると、被告方外の者が、夜間から早朝にかけてのみ、被告方のWi-Fiの電波の届く範囲に頻繁に出入りするなどし、ログイン履歴が取得されるような操作をしていたとは考え難い。
・さらに、被告は、令和3年4月30日前後にゴールデンウィークの休日及び有給休暇を利用して新潟県外に旅行に出かけていることが認められるところ、ログ情報には、同月29日午前5時7分頃から同年5月3日午前8時2分頃までの間は本件IPアドレスが記録されておらず、被告が旅行で不在にしている頃に合致する時期に、本件IPアドレスによるログ情報がない状況が生じていたと評価できる。
・以上のほか、被告方には、被告の母も居住しているものの、被告によってもあまりインターネットを利用していないということを踏まえると、本件投稿をしたのは被告であると推認できる。
投稿された画像が捏造された可能性を否定できず請求棄却された場合と当該訴え提起の違法性の有無 | 弁護士江木大輔のブログ