判例タイムズ1535号で紹介された裁判例です(高松高裁令和7年4月18日判決)。
改正民法により従来の時効の中断という概念が時効の完成猶予という概念に改まりました。
時効完成間際に緊急的に時効を中断させる(改正法では完成を猶予させる)ための方法である裁判外で行う催告の制度についてはそのまま維持されていますが(民法150条1項)、本来の時効期間が満了した後において時効が中断されている(新法では完成が猶予されている)期間中になされた催告についてはさらに時効期間を延ばすものではないという旧法下での解釈について新法では同条2項に明文化されています。
民法
(催告による時効の完成猶予)
第150条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
本件は、消滅時効の期間満了までに複数回の催告がされましたが、債務者側は、これが民法150条2項の「再度の催告」にあたり、最初にした催告以外は効力がないと主張しましたが、裁判所は、民法 150 条 2 項の「再度の催告」とは,「催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告」であるから,時効期間内に同条 1 項の催告が複数回された場合であっても「再度の催告」には当たらないと判示しています。
この場合、いつ時効期間が満了するかについては、それらの催告のうち最後の催告がされた時点と解するのが相当であるとしています(つまり、最後の催告による完成猶予の効力が最も長く時効の完成を猶予させることになる。)。