判例タイムズ1528号で紹介された事案です(広島高裁令和6年10月4日判決)。

 

 

本件は、指定暴力団の構成員であった原告(控訴人)の妻が平成17年に契約した共済契約(1年更新)に関し、妻が死亡したため共済保険金の支払い請求をしたが、平成26年に約款に改正付加された暴力団排除条項に基づき支払いを拒否されたため、約款の適否などが問題とされたという事案です。

 

 

【判旨】(請求棄却・控訴棄却)

〇本件暴排条項が本件共済契約に適用されるか

契約期間の定めのない預金契約等とは異なり,本件共済契約は前記のとおり 1 年ごとに更新されるものであり,平成 26 年約款で付加された本件暴排条項の適用を前提に更新されたものであるから,遡及的適用は問題とならず,主張自体失当である。

 

 

〇本件暴排条項は保険法 65 条 2 号により無効となるか

 

保険法

(重大事由による解除)
第57条
 保険者は、次に掲げる事由がある場合には、生命保険契約(第一号の場合にあっては、死亡保険契約に限る。)を解除することができる。
 前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者、被保険者又は保険金受取人に対する信頼を損ない、当該生命保険契約の存続を困難とする重大な事由

(強行規定)
第65条
 次の各号に掲げる規定に反する特約で当該各号に定める者に不利なものは、無効とする。
 第五十七条又は第五十九条 保険契約者、被保険者又は保険金受取人

 

控訴人が当審において,本件暴排条項は保険法 57 条 3 号に反するから,同法 65 条 2 号により無効となる旨主張するが,同法 57 条 3 号は,生命保険契約の解除事由として,「保険者の保険契約者,被保険者又は保険金受取人に対する信頼を損ない,当該生命保険契約の存続を困難とする重大な事由」を生命保険契約の解除事由として定めているところ,死亡共済金の受取人が反社会的勢力に属するという事実は,正に被控訴人の妻あるいは控訴人に対する信頼を損ない,生命共済契約の存続を困難とさせる重大な事由ということができる。そうすると,本件暴排条項が保険法57 条 3 号に反する特約に当たるものと認めることはできない。

 

 

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