判例時報2611号で紹介された裁判例です(東京地裁令和5年9月4日判決)。
ポイントと呼ばれるサービスは多くの場合商品やサービスを購入した際の「おまけ」であり、換金不可とされていることが多いものです。
本件はそのようなポイントではなく、化粧品等の販売会社が1ポイント=1円としてポイントそのものを販売し、購入した顧客はポイントで商品を買うこともできるし、換金もできるということが謳われていました。
しかし、その後、会社側が、「予告なしに規約を改訂できる」旨の規約の条項を根拠にして換金不可とする内容に規約を改訂したため、顧客が、そのような規約改定は無効であるとして約束とおりに保有ポイントを換金したとして相当額の支払いを求めるなどしたという事案です。
規約改定の有効性について、判決は、前記条項は、個々の顧客に対して説明したことを裏付ける証拠はなく、そもそも顧客らに効力が及んでいるとはいえないこと、また、仮に効力が及ぶとしても、想定されているのは軽微な修正などの小幅な変動に留まるものとした上で、本件のポイントは「おまけ」ではなく、ポイントそのものが商品でありポイントに関わる取り決めは商品の本質的な要素であるとした上で、換金できるかどうかはポイントを購入する顧客にとって極めて重要な利益であって、一方的に換金不可とする内容に規約を改訂することはできないと判断しました。
また、もともとの規約でもポイントの有効期限は6か月間とされており、会社側は、その期間を過ぎたので換金ではないという主張をましたが、判決は、そもそも会社がポイントの換金を拒否しておりこれは履行拒絶の意思を明らかにしていたものであり、訴訟でも換金することを争っていたのであるから、顧客にとって権利行使を困難とする事情を継続していたものといえ、ポイントの有効期間は進行しないと判断されています。