今月からいわゆるフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されています。


働き方の多様化に伴い、企業や組織にに所属せず自由で多様な働き方をする事業者が増え、それに伴い、取引条件が不明確なまま取引がされたり、支払いの遅延などが問題となる一方で、フリーランスは労働者ではないため労働法制による保護も図られず、下請法による保護もされずという中途半端な地位に立たされることとなったため、その保護を目的として令和5年3月に新法が制定されたものです。

 

法による規制の対象は委託する側の事業者の類型によって分かれていますが、何れの委託事業者であっても適用されるのが取引条件明示義務です(法3条)。

 

フリーランス新法② | 弁護士江木大輔のブログ

 

 

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律

(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
第3条
 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
2 業務委託事業者は、前項の規定により同項に規定する事項を電磁的方法により明示した場合において、特定受託事業者から当該事項を記載した書面の交付を求められたときは、遅滞なく、公正取引委員会規則で定めるところにより、これを交付しなければならない。ただし、特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合として公正取引委員会規則で定める場合は、この限りでない。

 

従前、フリーランスに関するトラブルとして最も多かったものの一つが、取引条件が曖昧であることでしたが、役務提供の内容や報酬の額、支払期日などを明示することを義務付けることでこうしたトラブルが防げることになります。

なお、明示すべき内容は公正取引委員会が以下の内容を明示するように規則で定めています。

①給付の内容
②報酬の額
③支払期日
④業務委託事業者・フリーランスの名称
⑤業務委託をした日
⑥給付を受領する日/役務の提供を受ける日
⑦給付を受領する場所/役務の提供を受ける場所
⑧(検査をする場合)検査完了日
⑨(現金以外の方法で報酬を支払う場合)報酬の支払方法に関して必要な事項

 

 

なお、業務委託をした時点で、性質上、当該事項の内容について決定することができない客観的な理由がある場合は(未定事項)、例外的にその明示を要しないとされますが、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならないとされています(法3条1項但書)。

また、未定事項がある場合には、内容が定められない理由及び未定事項の内容を定めることになる予定期日を当初の期日として明示する必要があります(公取委解釈ガイドライン)。

 

 

取引条件は書面により明示しなければなりませんが、必ずしも契約書の形式でしなければならないわけではなく、メールやSNSのメッセージ機能によって行うことも可能とされています(公取委規則)。