判例タイムズ1523号などで紹介された最高裁判例です(最高裁令和6年3月27日決定)。
株式会社では、会社法の規定により、一定の要件を満たす少数株主は裁判所の許可を得て株主総会を開催することが認められています。
少数株主による株主総会招集手続き | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)
本件は医療法の適用がある医療法人の社員が同様に(株式会社における株主総会にあたる)社員総会の開催を裁判所に求めたものですか、医療法にはこの点を定めた規定はなく、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般法人法」)37条2項を類推適用してこのようなことが認められるのかが問題とされました。
最高裁はつぎのとおり理由をあげて、この点について否定する判断をしています。
・医療法の規律は、社員総会を含む医療法人の機関に関する規定が平成18年法律第84号による改正をはじめとする数次の改正により整備され、その中では一般法人法の多くの規定が準用されることとなったにもかかわらず、一般法人法37条2項は準用されていないという形式面からの理由。
・医療法は、医療法人について、都道府県知事による監督(第6章第9節)を予定するなど、一般法人法にはない規律を設けて医療法人の責務を踏まえた適切な運営を図ることとしているという実質面からの理由。
なお、渡邊判事の補足意見があり、社員において訴訟手続により理事長に対して臨時社員総会の招集を命ずる旨の判決を得て臨時社員総会の招集を図ることができると考えられるとしています。
・医療法は、46条の3の2第4項において、理事長は、一定の割合以上の社員から臨時社員総会の招集を請求された場合にはこれを招集しなければならない旨を規定することによって、社員による社員総会の招集権限の濫用防止との調和を図りつつも、上記のような場合には社員が医療法人の運営に直接関与することを認めることによりその適切な運営を確保する趣旨に出たものと解される。
・このような同項の趣旨に照らすと、同項は、社員が医療法人の運営に関与する必要性があるというべき場合には、社員において理事長に対して臨時社員総会の招集を請求することができることとしたものと解することが相当であり、社員において臨時社員総会の招集を図るために採り得る法的手段として、訴訟手続により理事長に対して臨時社員総会の招集を命ずる旨の判決を得ることが考えられる。
訴訟手続きにより株主総会の開催を会社に義務付けることの可否 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)