金融商事判例1696号で紹介された裁判例です(東京高裁令和6年4月11日判決)。

 

 

現在の民法では、債権譲渡禁止特約が付されていたとしても債権譲渡の効力自体は妨げられないとされ(民法466条2項)、ただ、悪今滝重過失のある債権譲受人に対して、債務者はその債務の履行を拒むことができるものとされています。

 

 

本件は改正前民法の事案で、改正前民法では、譲受人が譲渡禁止特約の存在につき悪意又は重過失があった場合には債権譲渡自体が無効とされていました。

 

 

本件は、運送事業者が譲渡禁止特約付きの運送債権をファクタリング業者に債権譲渡して金融の調達を行った後に破産し、選任された破産管財人がファクタリング業者に対して、譲渡禁止特約の存在を知らなかったことにつき重過失があったとして債権譲渡の無効を主張し、受け取った金員の返還等を求めたという事案です。

 

 

第一審判決は、ファクタリング業者には重過失はなかったと認定しましたが、控訴審においては認定が逆転して重過失があったとされ破産管財人の主張が認められています。

 

 

破産した運送事業者と顧客との間の基本契約書にはいずれも譲渡禁止特約が付されていたたためこれを確認すれば特約の存在に気づけたはずで、実際に基本契約書を確認したファクタリング業者の中には債権譲渡を受けることを断ったところもあったのに対し、本件で被告とされたファクタリング業者は基本契約書の確認に代えてチェック方式による申告用紙によって特約がないことを確認していたところ、本件被告ファクタリング業者はあえて基本契約書の提示を求めなかったものであり、トラック協会の基本契約書では譲渡禁止特約が記載されていることからすれば同特約が付されることが通常であるという状況であったと言えることなどに照らし、重過失を認定しています。また被告とされたファクタリング業者の中には過去に同様の争点で争った経験を有している者もあり、容易な確認作業を行うことなく漫然と債権譲渡を受けていたという事情も指摘されています。

 

 

 

事業者向けファクタリング業等を目的とする取引が出資法等に抵触しないとされた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)