栃木県など4つの県の山あいの住宅で相次いだ強盗事件のうち、栃木県日光市で現金を奪ったなどとして逮捕されたベトナム国籍の容疑者が、留置されていた宇都宮市内の警察署で天井を壊して逃走しようとしたとして逮捕されました。

(8月4日NHKニュースウェブから一部引用)

 

単に逃走したというだけではなく,その際に拘禁場を損壊するなどした場合には罪が重くなることとされています(加重逃走罪)。

 

 

逃走罪の規定については、保釈中の被告人が逃走するなどの事例が問題化したことなどを受けて検討が加えられ、近時改正されています(令和5年6月6日から施行)。

 

 

改正前の単純逃走罪では、逃走の主体は「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」に限定され、ここには逮捕された者は含まれず、また法定刑も1年以下の懲役とされていましたが、改正により、「法令により拘禁された者」と主体が拡張され現行犯逮捕や緊急逮捕を含む逮捕された者にまで主体が拡張されるとともに法定刑も3年以下の懲役と重罰化されています。

 

刑法

(逃走)
第97条
法令により拘禁された者が逃走したときは、三年以下の懲役に処する。

 

記事で問題とされている加重逃走罪についても改正が加えられており、改正前の規定では逮捕状により逮捕された者までは逃走の主体として含まれていましたが、改正により現行犯逮捕や緊急逮捕を含む逮捕をされた者がにまで処罰の範囲が拡張されています。なお法定刑については改正前後で相違はありません。

 

刑法

(加重逃走)
第98条
前条に規定する者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して、逃走したときは、三月以上五年以下の懲役に処する。