家庭の法と裁判50号で紹介された事例です(東京高裁令和5年6月21日決定)。

 

 

本件は、子を連れて別居した妻から、夫に対する婚姻費用分担請求の事案です。

 

 

夫婦の次のようなメッセージでのやり取りがされていたことから、月額5万円の婚姻費用分担額の合意があったかどうかが問題とされました。

夫「生活費渡していないので振り込みます。こちらも生活するうえで食材等を購入購入する必要があるので5万円とさせてください。振込先を教えてください。」

妻「5万円で承諾しました。有難うございます。」

 

 

原審(家裁)は、月5万円とすることの合意があったとして認定しましたが、高裁は、合意の存在を否定し、改めて婚姻費用を算定し月11万円の支払を夫に命じています。

 

 

理由として、先ほどの妻のメッセージは「私の2人分の養育費並びに慰謝料、今後私が働けるようになるまでの最低限の生活費、今までの児童手当を頂けるのであればもう再構築は望みません。」「金額については私も分からないので、専門家と相談させて頂きます。」と続けられており、専門家ではない夫や妻が別居中の婚姻費用と離婚に伴う養育費等の給付を区別できていたか疑問があり、それまでに両者の間で双方のしゅぅにゅぅを踏まえて具体的な協議がされていたとは到底言えないこと、またやり取りの翌々月には婚姻費用分担調停を申し立てていることから、合意の存在を否定したものです。