令和6年4月1日から施行されている改正民法において、認知に関する規律の見直しがなされています。

 

 

改正前の民法では、利害関係人も認知無効を主張することができるとされていました。認知が有効か無効かによって自分の相続人としての地位や相続分に違いが生じるような場合には利害関係人として認知の無効を主張し得ることとなっていました。

 

 

血縁関係にない者に対する認知と認知無効を主張できる「利害関係人」の範囲 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

しかし、改正法ではこれを改めて、人の無効を主張できる範囲を、子又はその法定代理人、認知をした者、子の母のみに限って認めることとしています。

 

 

改正民法

(認知の無効の訴え)
第786条第1項 
次の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める時(第七百八十三条第一項の規定による認知がされた場合にあっては、子の出生の時)から七年以内に限り、認知について反対の事実があることを理由として、認知の無効の訴えを提起することができる。ただし、第三号に掲げる者について、その認知の無効の主張が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。
一 子又はその法定代理人 子又はその法定代理人が認知を知った時
二 認知をした者 認知の時
三 子の母 子の母が認知を知った時

 

これは父子が相当期間親子として社会的実態のある生活が継続され、当事者も認知を有効なものとする意思を有しているような場合にまで、第三者が、父子に生物地学上の父子関係がないことを理由として認知無効を求めることが゛敵るというのは行き過ぎであるという考え方に基づくものです。

 

 

また、改正前民法においては、認知無効の訴えは期間制限なくいつまででも可能とされていましたが、仮に認知の当事者であっても、いつまででも父子関係を否定できるとすることは法的安定性を害するとの考え方から、改正法では出訴期間を認知を知った時(子又はその法定代理人、子の母)又は認知の時(認知をした者)から7年間に限るとされました。

なお、胎児認知がされた場合には、一律に子の出生の時から7年間です(胎児認知には母の承諾を要するため、子の母は当然に認知がされたことを取る立場にあることから)。

 

 

このように、子が認知無効の出訴ができるのは認知を知った時から7年間とされるものの、それでは酷な場合も想定されます(親子として社会的実態のある生活がないような場合など)。

そのため、子が認知無効の出訴ができる期間の特則として(改正法786条2項)、子を認知した者が、認知後に子と継続して同居した期間(当該期間が二以上あるときは、そのうち最も長い期間)が3年を下回るときは、子は、認知がされたときから7年を経過していたとしても、21歳に達するまでの間、認知の無効の訴えを提起することができるとされています(養育の状況に照らして認知をした者の利益を著しく害するときは除かれます)。

 

 

 子は、その子を認知した者と認知後に継続して同居した期間(当該期間が二以上あるときは、そのうち最も長い期間)が三年を下回るときは、前項(第一号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、二十一歳に達するまでの間、認知の無効の訴えを提起することができる。ただし、子による認知の無効の主張が認知をした者による養育の状況に照らして認知をした者の利益を著しく害するときは、この限りでない。