三菱商事は15日、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行すると発表した。6月に開く株主総会で承認を受けて移行する。コーポレートガバナンス(企業統治)を強化するほか、権限委譲を通じて意思決定を速め、取締役会における経営戦略などの審議をさらに充実させる狙い。
(3月15日日経新聞から一部引用)
監査等委員会は、平成26年の会社法改正により新たに導入された制度です。
監査等委員会設置会社にはかならが取締役会を設置する必要があり、かつ、監査役は置かれないことになっています(会社法327条1項3号・4項)。
監査等委員には、他の取締役と区別して株主総会において選任された取締役が選任されることとされています(会社法329条2項)。
会社法
(取締役会等の設置義務等)
第327条1項 次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
三 監査等委員会設置会社
4項 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。
監査役が置かれないのでは、コーポレートガバナンスの強化にならないのではないかとも思われそうですが、監査等委員会は、監査役と同じく取締役の業務執行の監査を行うほか(会社法399条の2第3項1号)、取締役の人事や報酬について意見陳述権を行うことができるとされており(同項3号)、この点において、監査役の監査権限よりも職務権限が広く与えられています。
なお、監査等委員は「取締役」の中から選任されるのでお手盛りになるのではないかとも思われますが、監査等委員は3名以上で、かつ、その過半数は社外取締役でなければならないとされています(会社法331条6項)。
監査役の権限 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)
監査権限強化される一方で、取締役会は、取締役に対して、非設置会社であれば委任が認められない事項(例えば、重要な財産の処分や多額の借財といった事項)についても、幅広く業務の決定を委任することができるものとされています(会社法399条の13第5項、6項)。
記事において「権限委譲を通じて意思決定を速め」るとされているのはこの点を指していることになります。勿論、委任された取締役が一人で何もかも決めてしまうということではなく、実際には、他の取締役にも図ったうえで決めていくことになりますが、それはメールでも電話でもよいので、月1回程度の取締役会に仰々しく議題議案を上程して決議するということをしなてくもよいというところに実務上の意味があります。
