判例時報2574号で紹介された事例です(奈良地裁令和4年6月2日判決)。

 

 

本件は、原告が銃刀法5条1項18号にあたるとして、県公安委員会から射撃教習を受ける資格を認められないとの処分を受けたのでその取消を求めたという事案です。

 

銃砲刀剣類所持等取締法(許可の基準)
第5条1項 
都道府県公安委員会は、第四条の規定による許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、許可をしてはならない。
十八 他人の生命、身体若しくは財産若しくは公共の安全を害し、又は自殺をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者(前号に該当する者を除く。)

 

裁判所は、銃刀法5条1項18号の「おそれ」の解釈について、1号から17号までの事由が類型的に危害発生の恐れを高める属性を有すると認められるものを「一律に」欠格事由として定めていることから、18号の「おそれ」とは、他人の生命身体を害するなどの現実的な危険性がある場合だけではなく、そのものの言動、生活環境、人間関係などから将来において猟銃等を使用してそのような行動に及びかねない相当程度の危険性がある場合を含むと解釈したうえで、本件原告の次のような言動等を認定して、県公安委員会の処分に裁量の逸脱乱用は認められないと結論づけています。

・警察官から猟銃等の所持について質問を受けた際に、冗談としながらも、かつて適切な操作をしなかった警察官を撃ち殺すなどと述べたこと。

・大阪府での認定申請の際に、約6時間にわたって意見を繰り返し述べたり、155回もの警察への架電をしてときに興奮激昂して主張や要求を繰り返したりしたこと。

・通知書の受け取りをしなかったため警察官が直接持参したところ受け取りを拒否し、その後郵送されたため警察署に被害相談をしたこと。

・これらの事情は自らの主張を一方的かつ執拗に警察官に押し付けて、自分の行動を十分に統制できない粗暴な性格と被害意識が昂じると社会的規範について歪んだ認識のもとに行動に及ぶという性格を有していることを示している。

 

 

銃砲所持の許可の取消処分が裁量権を逸脱・濫用したものと判断された事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)