判例時報2572号で紹介された裁判例です(判例時報2572号 神戸地裁令和4年7月28日決定)。

 

 

本件は暴力団の組長(原告)が,退任した前組長(被告)に対して,その名義となっている本件不動産の移転登記を請求したという事案において,本件不動産に対して仮差押えをかけていた者が,被告を補助するため訴訟参加を申し出たのに対し,異議が出されたため裁判所ゅの判断がなされたという事案です。

 

民事訴訟法

(補助参加)
第42条
 訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。

 

 

裁判所は次のような理由から本件補助参加を認めています。

・補助参加人が被告に対して主張する損害賠償請求権は単なる一般債権であり,その地位は単なる経済的な利害に留まり,補助参加の利益を基礎づけるものではない。

・もっとも,本件補助参加申出人は,自己の損害賠償請求権の執行を保全するため,被告名義の本件不動産について仮差押えをしているところ,仮差押え命令は将来の強制執行に備えるために,債務者の財産の現状を債権者に対する関係で相対的,暫定的に固定し維持するものである。

・仮差押え債権者も一般債権者であることに変わりはないものの,仮差押えの執行により債務者は当該不動産の処分を相対的に禁じられることになり,債務者がそれより後に行った処分行為については,仮差押え執行が本執行に移行した場合や他の債権者が強制執行をした場合にはその効力が否定され,第三者の差押え登記前に投棄された仮差押え債権者は,強制競売がされた場合に配当要求をしなくとも配当が受けられるなどの効果を生ずる。本件においても,補助参加人は,本件仮差押えによって,勝訴判決を得た場合の本件不動産への強制執行の保全が図られ,本件不動産の強制競売に係る配当等について利益を受けるべき地位にあるといえる。

・原告は,本件仮差押えの登記に先立って本件不動産の処分禁止の仮処分決定を得て登記を得ているから,被告が敗訴すれば補助参加人は原告に本件仮差押えを対抗することができなくなる(民事保全法58条1項)。

 

 

民事保全法

(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)
第58条1項 
第五十三条第一項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。

 

 

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