民事訴訟法上,訴訟告知という制度があります(民訴法53条)。

 

 

民事訴訟法

(訴訟告知)
第53条
 当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。
 訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
 訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。

 

 

訴訟告知は,訴訟が継続している事実を裁判所を通じて第三者に対し通知する制度です。

訴訟告知を受けた第三者が当該訴訟に参加するかどうかは自由です。

 

 

なぜ,訴訟告知をするかというと,適法な訴訟告知を受け,補助参加する利益(参加の利益)を有する第三者については,参加してもしなくても,後になって当該訴訟の判決の効力が及ぶ(参加的効力)とされているからです(民訴法53条4項,46条)。

参加しなくても参加的効力が及ぶとされている根拠は,訴訟告知されて自己の権利を主張することができる機会が与えられたのに,補助参加しなかった以上は,参加したのと同じ不利益が与えられてもやむをえないと考えられるためとされています。

 

 

なお,参加的効力が認められるのは,あくまでも,当該第三者に参加の利益が認めらる場合に限られますので,参加の利益がなければ,第三者が訴訟に参加しようとしまいと参加的効力は認められません。

実務上,訴訟告知がされた場合,訴訟告知の理由や訴訟の程度などを記載した書面(訴訟告知書)が提出されれば,裁判所は第三者に対して訴訟告知書を送達し,第三者が参加することに対して相手方当事者から異議が述べられない限りは裁判所が参加の許否を判断することはないので(民訴法44条1項),第三者に参加の利益があったのか,参加的効力が認められるのかということはその後後訴が提起された場合には当該後訴において判断がされることになります。

そのため,訴訟告知書を受け取った第三者としては,参加しておいた方が無難であるということは言えますが,わざわざ参加してた藪をつついて蛇を出すことになるよりは不参加という選択をすべきか,なかなか判断が悩ましいこともあります。

 

(補助参加人に対する裁判の効力)
第46条
 補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一 前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二 前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。

 

第三者が他者間の訴訟に参加することができるのは(参加の利益),専ら訴訟の結果につき法律上の利害関係を有する場合に限られ、単に事実上の利害関係を有するにとどまる場合は補助参加は許されない,そして,法律上の利害関係を有する場合とは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいうというのが判例の立場です(最高裁平成13年1月30日決定 決算において取締役らが忠実義務に違反して粉飾決算を指示し又は粉飾の存在を見逃したことを原因とする抗告人の取締役らに対する損害賠償請求権に基づき,取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対して提起された株主代表訴訟において,損害賠償請求権が認められて取締役らが敗訴した場合には、会社の各期の計算関係に影響を及ぼし、現在又は将来の取引関係にも影響を及ぼすとして,会社が訴訟に参加する利益を肯定)。

 

 

また,参加的効力が認められる範囲(判決のうちどの部分が後訴にも効力を有するのか)について,判例(最高裁平成14年1月22日判決)は,判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものであるが、この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって、これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。けだし、ここでいう判決の理由とは、判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい、これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして、その他、参加的効力が、判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はないとしています。

本件は,建築されたカラオケボックスに設置するテーブルなどを納入した業者が売買代金の支払を求めた代金請求の事案ですが,すが,原告である納入業者は本件訴訟に先立ち、カラオケボックスの建築業者に対し、同建築業者からの注文によりカラオケボックスに本件商品を含む家具等を納入したとして別件訴訟を提起し、建築業者は、この納入商品の一部について、注文者は自分ではなく、施主である被告が直接注文したものであるとして争ったため、原告は、被告に対し訴訟告知をしたものの、被告は補助参加せず,別件訴訟は、本件商品に係る代金請求部分については請求が棄却されて確定し、その判決の理由中において、本件商品は建築業者が購入したものではなく、本件訴訟の被告が購入したものであるとの認定がされました。

原告としては,参加しなかった被告に対して参加的効力が及ぶと主張しましたが,最高裁は前記都のとおり説示した上で別件の売買代金請求訴訟の結果によって、被告の原告に対する本件商品の売買代金支払義務の有無が決せられる関係にあるものではなく、前訴の判決は原告の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすものではないから、原告は、前訴の訴訟の結果につき法律上の利害関係を有していたとはいえない。したがって、被告が前訴の訴訟告知を受けたからといって被告に前訴の判決の効力が及ぶものではない。しかも、前訴の判決理由中、本件商品を買い受けたものとは認められない旨の記載は主要事実に係る認定に当たるが、被告が本件商品を買い受けたことが認められる旨の記載は、前訴判決の主文を導き出すために必要な判断ではない傍論において示された事実の認定にすぎないものであるから、同記載をもって、本訴において、被告は、原告に対し、本件商品の買主が被告ではないと主張することが許されないと解すべき理由はないとして,参加的効力を否定しています。