金融・商事判例1668号で紹介された裁判例です(大阪高裁令和4年3月24日決定)。

 

 

友人と二人で会社を作るというとき,少なくとも,出資割合は51:49にしておくことが普通です。

こうしておかないと揉めたときに,株主総会で過半数の決議が得られず何も決められなくなってしまう(デッドロック)からです。

 

 

本件は,中古自動車の輸出入などを行う株式会社(株式譲渡制限のある閉鎖会社)の50パーセントづつ株式を持ち合っていた株主二人が次第に経営方針などをめぐって対立するようになり,一方の株主がデッドロックとなっており株主総会での意思決定が困難であることを理由として会社法833条1項1号に基づいて会社の解散を裁判所に対して請求したという事案です。

 

会社法

(会社の解散の訴え)

第833条1項 次に掲げる場合において、やむを得ない事由があるときは、総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、訴えをもって株式会社の解散を請求することができる。

 株式会社が業務の執行において著しく困難な状況に至り、当該株式会社に回復することができない損害が生じ、又は生ずるおそれがあるとき。

 

本判決は,デッドロック状態が生じていたり,さらにはその一方の株主により他方の株主の意向に反する業務執行が行われ,他方の株主においてその意向が反映されないままという状態が継続しているというだけでは会社法833条1項1号の要件が満たされるとはいえず,デッドロック状態などに伴って,会社の運営上必要とされる意思決定が行うことができないなどにより業務そのものが著しく停滞し,かつ,これに起因して会社に回復困難な損害が生じ又はその恐れがあることを要すると指摘した上で,本件会社においては株主総会の開催がなされず任期満了に伴う新たな取締役の選任もなされていないなどデッドロック状態にあるものの,従来選任された3名の取締役がその権利義務を有しており(任期満了したとしても新たな取締役,代表取締役の選任がされるまでは引き続きその地位を有する 会社法346条1項,351条1項),取締役会も開催されて代表取締役が選任されるなどしており,デッドロック状態により不正常な運営の状態とはいえるものの,会社としての意思決定は株主総会の決議事項に及ばない限りは適法に可能となっており,現時点で業務そのものが著しく停滞しているとは認められないとして,解散請求を退けています。