家庭の裁判と法43号で紹介された事例です(横浜家裁川崎支部令和3年12月17日審判)。

 

 

本件は中国の裁判所(人民法院)で養育費が取り決められた中国人同士の子の養育費の増額についての審判事件です。

中国人同士(ただし,一方当事者はその後再婚して日本に帰化)の争いですが,なんでまた日本の裁判所が裁くことになったのかというと,もともと本件中国人夫妻は日本に住んでおり,子どもは中国にいる本件申立人の親に預けていたため,当時の養育費については中国の裁判所で取り決めていましたが,その後,子どもも来日し申立人と一緒に住むようになったことから,日本の裁判所に養育費の増額が申し立てられました。

 

 

本件審判では,子どもが日本に住んでいることから国際裁判管轄は日本の裁判所にあるとしたうえで,いずれの国の法律を適用すべきかについては,扶養義務の準拠法に関する法律2条1項により,扶養権利者である子が住んでいる我が国(日本)の法律が適用されるとしました。

 

 

扶養義務の準拠法に関する法律

(準拠法)
第2条1項 
扶養義務は、扶養権利者の常居所地法によつて定める。ただし、扶養権利者の常居所地法によればその者が扶養義務者から扶養を受けることができないときは、当事者の共通本国法によつて定める。

 

そして,中国の裁判所における養育費の取り決めが我が国においても効力を有するかについては,本件審判は,民訴法118条4号の「相互の保証」の要件を欠くとしてこれを否定しています。

 

民事訴訟法

(外国裁判所の確定判決の効力)

第118条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。

 相互の保証があること。

 

そのうえで,前記のとおり,我が国(日本)の法律が適用される本件において改めて養育費を算定して審判を下しています。