家庭の法と裁判43号で紹介された事例です(福岡家久留米支部令和2年9月24日判決)。

 

 

本件は、同居していた家から夫が出る形で別居が開始された夫婦間において、夫が妻に対して離婚を求めたという離婚訴訟ですが、特徴的なことは、本件では、夫婦は同居時期において犬3頭を飼っており、妻が、離婚を争いつつ、離婚が認められた場合の財産分与として当該犬の帰属を共有持分を2分の1づつとして定めたうえで,妻が飼育し続けるために今後発生する餌代や獣医の費用などとして扶養的財産分与として犬が生存し続ける限り月額4.5万円のしはらいを求めたという点にあります。

 

 

裁判所は,離婚については認容した上で,本件犬に積極的な財産的価値は認め難いとしつつ,一種の動産として広い意味では夫婦共有財産に該当することからその帰属,民法253条1項により共有持分に応じた飼育費用を定めておくのが相当であるとしました(実質的な理由として妻が飼育し続ける際の費用の分担を定めることにあったものと解されます)。

そして,その持分割合としては,双方の経済状況などに照らして,夫が3分の2,妻が3分の1としたうえで,相応した費用を負担するのが実質的に公平であるとし,民法649条のような費用の前払いについての規定はないものの,犬3頭の飼育費用として人訴法32条2項の規定による定期金の支払いを夫に対し命じています(具体的には家賃月額4万円5000円のうち2万2500円程度を犬の飼育のための場所相当分として1頭でも飼育している限り発生するものとして犬が1頭でも生きているその3分の2相当額である限り月1万5000円の支払を,また1頭につき月900円の費用の支払を夫に対して命じています)。

 

 

人事訴訟法

(附帯処分についての裁判等)
第32条
 裁判所は、申立てにより、夫婦の一方が他の一方に対して提起した婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分、財産の分与に関する処分又は厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第78条の2第2項の規定による処分(以下「附帯処分」と総称する。)についての裁判をしなければならない。
 前項の場合においては、裁判所は、同項の判決において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。

3項以下 略