家庭の法と裁判 42号で紹介された審判例です(名古屋家裁令和3年12月15日審判)。
本件は,家庭裁判所で保護観察所の保護観察に付する旨の決定を受け,「保護観察に付されたときに保護観察所の長に届け出た住居又は転居をすることについて保護観察所の長から許可を受けた住居に居住すること」などの一般遵守事項の説明を受けたが,SNSで知り合った相手と付き合うなどして夜遊び,家出が増えるなど素行が悪化した上に,許可を受けた住居の自立準備ホームに居住しなかったため,第1種少年院に送致されたという事案です。
審判では,少年の問題性について具体的に指摘した上で,
・そのような少年の問題性の背景には,少年は,不快なことや困難なことを処理したり,対応したりするスキルが著しく欠けており,面白くないと感じたら,不快感情を募らせ,SNSで知り合った自分を受け入れてくれる者へ依存し,逃げ場として利用するパターンが定着している上,衝動性が高いこともあって,後先を考えずに刺激に飛びつきやすく,犯罪は良くないとの意識や,ある程度の善悪の判断,損得勘定は持ち合わせているものの,場の雰囲気や周りに流されて行動してしまうほか,知的な制約もあって,相手から強く迫られたり,困難な状況に追い込まれると思考が停止してしまい,相手に言われるまま安易に薬物を使用したり,窃盗に係わったりするだけでなく,自身が被害を受けることにもなるという性格及び行動傾向上の問題があることからすると,少年の問題性は根深いといわざるを得ない。
・少年の実母は,感情的な態度をとるために少年と対立することが多く,少年が家庭から離反する要因の一つとなっており,また,母方祖母は,少年の度重なる家出が改善されないことで指導意欲を著しく後退させていることからすると,これらの者による監護に多くを期待することはできない。
とし,
以上の諸事情を考慮すると,少年の遵守事項違反の程度は重く,保護観察によっては少年の改善及び更生を図ることはできないものと認められるから,少年の更生のためには,少年を矯正施設に収容し,少年の知的能力や特性に応じた矯正教育を施して,社会の仕組みや決まりを正しく理解させ,物事を適切に判断する力や危険を察知する力を養い,不良交友からの離脱を図るとともに,自身の決断や行動には責任を持つ必要性があることを認識させ,社会適応力を高めることが必要であるとして第一種少年院への送致の理由としています。