判例タイムズ1504号で紹介された裁判例です(札幌地裁令和4年1月20日判決)

 

 

本件は,被告との間でフランチャイズ加盟契約等を締結し,弁当店を経営していた原告が,平成24年10月から令和元年12月までに被告に対して支払った広告宣伝費等のうち月額7万5000円を超えるチラシ折込費用等は原告に支払義務のないものであったとして,被告に対し,不当利得返還請求・損害賠償請求を求めた事案です。

 

 

原告は,広告宣伝費の定めに実費負担の文言がないこと及び被告担当者らから広告宣伝費は月額7万5000円の定額と説明され,それ以外に折込費用や販促費がかかる旨の説明を受けていないことから,本件加盟契約において原告が負担すべき広告宣伝費等は月額7万5000円のみであったと主張しましたが,判決は,被告担当者らが原告に対し,広告宣伝費は月額7万5000円の定額であり,それ以上の負担が生じない旨説明したことは本件全証拠を検討しても認められず,また,本件加盟契約における広告宣伝費等の定めの記載からは,直ちに,加盟契約者の広告宣伝費等の負担が月額7万5000円の定額に限定されるものと解することはできないし,原告に交付されたと認められる本件案内書面には,広告宣伝費等の性質として「当社が行うテレビCM,ラジオCM等の広告宣伝等に要する費用及び各種販売促進物等の費用」と記載されており,各店舗が需給動向や地域特性に応じて配布するチラシの折込費用や販促品の追加費用までが定額の広告宣伝費等に含まれていると解することもできないとし,原告の主張を否定しています。

 

 

また,原告は,本件加盟契約を締結する約8年前から,被告の運営する店舗の店長として稼働し,その後,被告との間で本件経営委託契約を締結する等しており,その際には,チラシを折り込みにした場合,その費用が店舗の経費となることを理解していたことや,原告に交付された本件事業計画書の月次の損益計画では,販売促進費として9万4000円が計上されていたことも考慮すれば,原告が負担すべき広告宣伝費等が実費の如何にかかわらず,月額7万5000円に限定される旨の合意が原告と被告との間でされたと認めることはできないこと,原告は,遅くとも平成24年10月1日以降は,店長として店舗責任者会議に参加し,販促計画書の交付を受けていたこと,この販促計画書には販促品の発注書も含まれており,同発注書の価格欄には「定額」「無償」のほか,具体的な金額が記載されていること,原告はこの発注書を被告に送付して販促品を注文していたことは前記認定のとおりであり,これらの事実からは,原告が販促品や折込費用について別途費用がかかる場合があること,及びその額を認識しながら,注文を行ったものと推認されるから,本件折込費用等については原告が負担する旨の合意が成立していると認定できるとも指摘し,本件において原告請求は棄却されています。