判例タイムズ1504号で紹介された最高裁決定です(最高裁令和4年6月20日決定)。

 

 

本件は,実母につき保佐開始の申立てをするとともに,保佐の開始がされるまでの間の保全処分を申し立てた者が,保全処分において選任された財産の管理者が家裁に提出した財産目録などの記録の謄写を求めたというものです。

 

 

家事事件手続法において,記録の閲覧謄写については閲覧等を申し立てた者が,その手続きの当事者であるか第三者手であるかによつて手続保障を異にしています(当然,当事者の地位にあるほうが手続保障が手厚い)。

 

 

家事事件手続法において,家事審判事件記録の閲覧謄写についてどのように規定されていますか? | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

家事事件の記録 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

本件では保全処分を申し立てた者が,その申立てにより選任された財産の管理者が提出した資料の謄写を求めているので,「当事者」に当たるとしても良さそうですが,裁判所は,

・保佐開始の審判事件を本案とする財産の管理者の選任及び保佐命令の保全処分(法134条1項、2項、126条1項)は、保佐開始の申立てについての審判が効力を生ずるまでの間、財産の管理者を選任するなどして暫定的に法律関係を形成し、もって被保佐人となるべき者の保護を図ることを目的とするものであると解される。そうすると、上記保全処分を命ずる審判が効力を生じた後は、保佐開始の申立てについての審判が効力を生ずるまでの間、財産の管理者による財産の管理及び代理権の行使等を通じて、被保佐人となるべき者の保護が図られることになるのであるから(法134条5項、6項、民法28条)、上記保全処分の事件は、財産の管理者の選任等の保全処分を命ずる審判の確定により終了するというべきである。
・上記保全処分の事件において選任された財産の管理者は、その管理すべき財産の目録を作成し、これを家庭裁判所に提出しなければならず(法134条6項、民法27条1項、家事事件手続規則85条、82条1項)、また、家庭裁判所に命ぜられて財産の状況についての報告書を提出する(法134条6項、125条2項)が、これらの書面は、財産の管理者の選任後における財産管理事務の適正を期することを目的として提出を求められるものであるから、上記保全処分の事件についての裁判所及び当事者の共通の資料となり得るものではない。
・以上によれば、保佐開始の審判事件を本案とする保全処分の事件において選任された財産の管理者が家庭裁判所に提出したその管理すべき財産の目録及び財産の状況についての報告書は、上記保全処分の事件の記録には当たらないというべきである。

として,本件の申立人は「第三者」に当たるものであるとし,第三者の申立てによる記録の謄写が不許可とされた場合には即時抗告ができないとする規定に従い,本件の即時抗告を不適法であると判断しています。