絞首刑による死刑は、残虐な刑罰を禁じる国際人権規約に違反するとして、いずれも大阪拘置所に10年以上収容されている死刑囚3人が29日、国に執行の差し止めと計3300万円の慰謝料の支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こした。

(11月29日日経新聞から一部引用)

 

法律的な観点からは,死刑が,憲法36条が規定する「残虐な刑罰」に該当しないかということが問題となります。

 

憲法

第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

 

この点について,最高裁判例(昭和23年3月12日)は「死刑は、冒頭にも述べたようにまさに窮極の刑罰であり、また冷厳な刑罰ではあるが、刑罰としての死刑そのものが、一般に直ちに同条にいわゆる残虐な刑罰に該当するとは考えられない。ただ死刑といえども、他の刑罰の場合におけると同様に、その執行の方法等がその時代と環境とにおいて人道上の見地から一般に残虐性を有するものと認められる場合には、勿論これを残虐な刑罰といわねばならぬから、将来若し死刑について火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑のごとき残虐な執行方法を定める法律が制定されたとするならば、その法律こそは、まさに憲法第36条に違反するものというべきである」と判示し,火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑と比べて現在の絞首刑という方法(実際に絞首といえるのかという点は論争がありますが)は残虐ではないとしています。

 

 

また,記事でも触れられている国際人権規約は,①社会権規約②自由権規約③自由権規約選択議定書④死刑廃止自由権規約第二選択議定書の総称ですが,死刑に関して規定されている中で日本が批准している②の6条2項は次のとおり規定しています(日本は④については批准していません)。

 

国際人権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約))

第6条2項 死刑を廃止していない国においては、死刑は、犯罪が行われた時に効力を有しており、かつ、この規約の規定及び集団殺害犯罪の防止及び処罰に関する条約の規定に抵触しない法律により、最も重大な犯罪についてのみ科することができる。この刑罰は、権限のある裁判所が言い渡した確定判決によってのみ執行することができる。

 

この規定によっても死刑自体について廃止しなければならないものとはされていないのですが,先進国の中で死刑制度があるのはアメリカ(の一部の州)と日本だけとされ,人権がどれだけ保障されているかによって外交関係や国際取引にも影響を及ぼしかねないという状況にあって,今後,どこまで死刑制度を維持できるのか,時折発生する残虐な事件に対する遺族や国民の処罰感情についてどのような考えるべきなのかという点はとても重い課題であるものといえます。