金融商事判例1652号で紹介された裁判例です(静岡地裁沼津支部令和4年6月27日決定)。
本件は,銀行の株主総会の開催にあたり,出席希望の株主は事前に登録した上で,希望者が会場の座席数を超える場合には抽選制としたことについて,株主が,株主が有する総会参与権,会社法360条などに基づいて,株主総会の開催禁止などを求める仮処分を行ったという事案です。
裁判所は,株主が総会参与権を有するとしても,会場の規模や時間的制約等から,株主が希望すれば必ず株主総会に出席できる権利であるとはは認められないとし,新型コロナウィルスの感染拡大防止の観点から前記のような事前登録,抽選制を指そう要したとしても,やむを得ないものであり,合理性を欠くものとはいえないと判断しています。
また,会社法360条に基づく差し止め請求についても,会社法が定める手続きが履践されていなかったことなどを指摘して,退けています。
会社法
(株主による取締役の行為の差止め)
第360条 六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。
3 監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「著しい損害」とあるのは、「回復することができない損害」とする。