判例タイムズ1499号で紹介された裁判例です(東京高裁令和3年3月23日判決)。

 

 

本件はPTA会長がわいせつ目的で女児を誘拐し,殺害したという事案です(第一審は被告人を有罪とした上で控訴審も是認)。

 

 

争点の一つが,被告人が所有し居住する本件マンションの敷地内に設置されている本件ごみ集積場に侵入し,被告人が捨てた本件ビニール袋の中に入っていた本件吸殻を取得した行為の適法性でした。

 

 

判決では,

本件捜査を担当した警察官は,本件ごみ集積場から本件ビニール袋を回収する捜査方法について,令状主義の観点からその適法性を慎重に検討する姿勢が欠けており,安易に無令状で可能であると軽信した挙げ句,違法な捜索差押えをした点で厳しい非難に値するといわなければならない

としつつ,以下のとおり説示して,令状主義の精神を没却するような重大な違法はないものと判断しています。

・この誤りは,強制処分によらなければおよそ行い得ない捜査を令状の発付を受けずに強行したというものではなく,任意捜査として行うことができたのに,警察官がその捜査方法を検討しなかったというものであって,令状主義を潜脱するまでの意思は認められず,前者に比べれば違法性が軽減されるものである。

・以上を踏まえた上で,更に進んで,本件吸殻関連証拠の証拠能力を検討するに,この点は,基本的人権の保障と実体的真実発見の両面から考えなければならない。

・既に説示したとおり,本件ビニール袋に関しては,被告人が所有権を放棄した無価物であって,被告人やD社の占有が認められるものの,松戸市清掃組合による収集までの短時間にすぎず,かつ,被告人による再利用等が予定されていないもので,本件回収行為は,被告人以外の第三者に対する実質的な権利侵害もなかったこと,本件回収行為の態様は比較的穏当なものであったことが認められる。

・加えて,本件は,早期解決を強く求められていた重大事件であり,捜査対象者として浮上していた被告人のDNA資料を入手する高度の必要性があったという事情が認められる上,数日間にわたって被告人の行動確認を行ってもDNA資料を入手することができなかったという経緯も併せ検討すると,本件回収行為に,令状主義の精神を潜脱し,没却するような重大な違法があったとは認められない(なお,念のため,将来における違法な捜査の抑制の見地からの検討もしておくと,本件が当審に係属し,弁護人によって本件ビニール袋の回収行為に係る違法収集証拠の主張がなされた後の令和元年5月7日,千葉県警察において,「指導だより」が発出され,マンションのごみ集積所内にあるごみに関し,今後は,マンション管理者やごみ収集業者から任意提出を受けて領置するという方法により押収し,領置調書を作成すべきであることなどを内容とする指導がなされたことが認められる。

したがって,将来の違法捜査の抑止という点でもその方策が取られているということができる。

 

 

 

マンション内のごみステーションに捨てられたごみの任意提出を受けてこれを領置し開封することの適法性 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)